「コンピューター苦手」で廃業の高齢医師も『マイナ保険証』に医師ら集団提訴 仲間の廃業に疑問抱く医師
■「マイナ保険証なんてやっている暇はない」
マイナ保険証とかやっている暇はありません。それよりも自分の患者さんのために1分でも多く考えなければいけないんです。 患者さんに対してもっと良い診療をさせるための時間を、医者に確保するということが、国のやるべきことではないかと思います。 デジタル化が悪いわけではないけれど、それよりも患者さんのためにやりたいことがあるって思っている人間もいるということを知っていただければと思います。 (熱田歯科医院・熱田衛政歯科医師)
■医師・歯科医師が法廷で苦境訴えるも…
こうした現状の中で、「システム導入の義務はない」と裁判に訴えた医師や歯科医師たち。 裁判の中では、熱田医師が指摘したように、「カードリーダーやインターネットのセキュリティなど、設備を整えるために高額な経済的負担が発生することから、高齢の医師の中には廃業を選択せざるを得ない状況になっている」などと主張してきた。 しかし東京地方裁判所(岡田幸人裁判長)は11月28日、原告の訴えを棄却する判決を言い渡した。 理由として、「経済的な負担が一定程度生ずるとしても、それが事業継続を困難にするようなものと直ちにいうことはできない」などと指摘し、義務化が廃業につながったということを認めることはできないと判断してもいる。
■裁判所は「まったく現場の状況も理解していない」法律家も指摘する「地域医療崩壊」の恐れ
こうした判決について、弁護士でマイナ保険証問題に詳しい、神奈川大学法学部・幸田雅治教授は次のように指摘する。 【神奈川大学法学部・幸田雅治教授】 東京地裁による「原告の請求棄却」は、法律の委任の範囲を拡大解釈し、また医療現場の状況を理解していない、極めて不適切な判決だと思います。 オンライン資格確認の義務付けは、医療機関に設備整備の負担だけでなく、その後の運用の面においても、大きな負担をかけるものです。現に、この義務付けを契機に、廃業に追い込まれた医療機関が多く報道されています。都市部の大病院は別にして、地方の医療機関や診療所などには大きな負担をかけるもので、地域医療の崩壊が懸念されます。 今回の判決では、医療機関が背負う負担について、国の主張をそのまま認め「それほどの負担ではない」と一刀両断で切り捨てていますが、まったく現場の状況も理解していないと言わざるを得ません。 (神奈川大学法学部・幸田雅治教授)
原告らは、「判決は全部不服」として12月12日に控訴。さらに争う姿勢を示している。 医療現場にさまざまな負担をもたらしている「マイナ保険証」問題。 続く記事(12月22日公開)では、情報セキュリティの面でも大きな負担がかかっていることを、医師の生の声からお伝えする。 (関西テレビ 2024年12月21日)
関西テレビ