自社株の無償交付を従業員に拡大、M&Aでの活用も可能に…会社法改正に向け報告書とりまとめへ
企業の成長投資を後押しすることを目的に、経済産業省は月内にも会社法改正に向けた報告書をまとめる方針だ。企業が保有する自社株を柔軟に活用できるようにし、従業員への無償交付や、海外企業の合併・買収(M&A)の際に相手企業の株主に交付することを可能にするよう求める。2月に始まる法制審議会(法相の諮問機関)での議論に反映させる狙いがある。
現行の会社法では、自社株を無償で交付できる対象は取締役や執行役らに限られている。従業員が自社株を保有するには、あらかじめ決めた価格でストックオプション(自社株購入権)を取得するなどの手続きを経る必要があった。
法改正により、従業員や子会社の役員・従業員への無償交付を解禁すれば、従業員らが株主となるため働く意欲の向上につながり、業績アップで個人の所得増加も期待できる。成長性の高い企業は優秀な人材確保につながる可能性がある。
自社株を活用したM&Aについては、買収先の株主から株式を譲り受け、その対価として自社株を交付する「株式交付」と呼ばれる仕組みを活用する。現在は国内企業同士の買収に制限されているが、海外企業に活用できれば新たな資金調達が必要なく、企業が成長に向けた投資に踏み切りやすい。産業界からも解禁を求める声があった。
このほか、株主総会をオンラインだけで開催できる法改正も目指す。
経産省は昨年9月に有識者会議を設け、企業の「稼ぐ力」を高めるための会社法改正に向けた議論を進めてきた。座長の神田秀樹・東大名誉教授(会社法)は「日本企業は安定重視で稼ぐ力を磨いてこなかった。経営者が大胆にリスクをとって成長への投資を決断できる法改正と企業の意識改革が必要だ」と指摘する。