阿部サダヲ、お調子者からクズ男まで演じ分け 演技で一番悩んだこととは?
「共感度0%」の役を演じること
冒頭でも紹介したように、本作の宣伝コピーは「共感度0%、不快度100%」。主要キャラは嫌な女、下劣な男、ゲスな男、クズすぎる男……と、確かにひどいものである。 「共感度0%ってひどいですよね(笑)。誰からも支持されないってことですもん。だからこそ、(このキャッチコピーは)凄くいいですよ。観たくなりますよね?」と阿部は屈託なく笑う。さぞかし陣治に共感しているのだろう。 「え? 陣治への共感度ですか? それは0%ですよ(笑)。でも、最後のセリフなんて、ホントに秀逸。原作の沼田(まほかる)さんが凄い方なんですね。なかなか、ああいう発想はできませんよ」と話す。気になる最後のセリフは、ぜひ劇場でご覧いただきたい。そして、仰天してもらいたい。
『舞妓Haaaan!!!』が大きなターニングポイントに
俳優・阿部サダヲの今があるのは、もちろん所属する大人計画の主宰である松尾スズキの存在は言うまでもない。それでは、松尾以外に影響を受けた人物はいるかの問いに、 「市川準監督でしょうか。『トキワ荘の青春』という映画に出させていただいたときに、台本はあるんですが台本のことは一切やらないんです。シチュエーションを箇条書きで書かれたもの配られて、それを撮っていくという不思議な感覚。それまでは台本を覚えて、それを次の日に撮るということしかやってこなかったから、新鮮でした。こんなやり方もあるんだなって。ドキュメントっぽい撮り方の映画だったというのもあるのかもしれませんが」 阿部のターニングポイントとなった作品は何か? 「やっぱり初めて主演をやらせていただいた『舞妓Haaaan!!!』が大きいですね。それまで映画もあまり出ていなかったし、これだけ現場にガッツリ携わることがなかったので。映画って、こんなにいろんな人が関わって楽しいんだって感じさせてくれた作品です」
大の野球好きでジャイアンツファン
そんな阿部の素顔について迫ってみた。趣味などプライベートについて尋ねると、「今は趣味はないなあ……。あ、野球が好きですね。先輩が作っていた草野球チームがあったんですけど、みんな年取ってきて、どこか怪我したりとかで解散しちゃったんですよ。野球は観るのも好きです。ジャイアンツファンです」と返ってきた。 そして、突如、スイッチが入ってしまったのか、少年のように目を輝かせてこう続けた。 「毎年、シーズン中に1回は球場に観に行くようにしています。好きな選手ですか? 今だと坂本選手かな。子供の頃は原辰徳さんが好きでした。世代的に、あの頃の選手の応援歌は全員歌えましたからね。あのころが一番盛り上がってましたね」と懐かしそうに微笑んだ。 その人懐っこい笑顔と、シャイな語り口調に、阿部サダヲという人の魅力が感じられた。 (取材・文・写真:水澤 敬) 『彼女がその名を知らない鳥たち』(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会 10月28日(土) 新宿バルト9他全国ロードショー 配給:クロックワークス ■阿部サダヲ(あべさだを) 1970年4月23日生まれ。千葉県松戸市出身。1992年より大人計画に参加。パンクコントバンド「グループ魂」では“破壊”としてボーカルを担当。2007年には『舞妓Haaaan!!!』で映画初主演し、第31回日本アカデミー賞「優秀主演男優賞」を受賞。最近の出演に大河ドラマ「おんな城主 直虎」、映画「殿、利息でござる!」など。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主演にも決定している。