阿部サダヲ、お調子者からクズ男まで演じ分け 演技で一番悩んだこととは?
ときにお調子者、ときにクール――。阿部サダヲという人は、どんな役でもこなすマルチプレイヤーのイメージが強い。そして「彼が出る映画にハズレなし」と言われるほど、その演技がクセになる人は多い。 そんな個性派俳優・阿部が、女優・蒼井優とW主演を務める映画『彼女がその名を知らない鳥たち』が、10月28日より全国公開となる。阿部が演じるのは、8年前に別れた男を忘れられずにいる女・蒼井演じる十和子と同棲する陣治(じんじ)というクズ男。お世辞にも清潔とはいえない身なりで、下劣な男だ。だが、そうした下劣な男が見せる、一途な「究極の愛」には、見るものに美しささえ感じさせるほどなのだ。そして、衝撃のラスト。映画の宣伝コピー「共感度0% 不快度100% でもこれはまぎれもない愛の物語」という問題作に出演する阿部に、思いの丈を語ってもらった。
突然のセリフ追加に「やってやる」という思い いちばん難しかったのは?
数多くの映画に出演してきた阿部が、今回初めてタッグを組んだのが白石和彌監督。『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など、どちらかというとバイオレンス色の強い作品を手がけてきた。阿部は「(作品のイメージで)白石監督に怖い感じの方なのかなと想像していたんですよ。だから、台本をもらって、こういう作品も撮る方なんだって意外に感じました」と振り返る。白石監督は1974年生まれで、阿部の4歳年下になる。 「映画にもホント詳しいし、4つしか変わらないから、ほとんど同世代。面白いと思うことのツボも同じですしね(笑)」 クランクインし、撮影が進むにつれて白石監督からセリフの追加や変更が相次いだ。台本にないセリフの追加について、「逆に嬉しいというか、やってやるという気持ちになるし、それが映画の雰囲気を作っていくので大歓迎でした。特に、十和子と陣治の会話のシーンでのセリフ追加が多かったのですが、ホントなくてもいいようなことを付け足したりするんです(笑)。それがまた面白かったりして」と阿部は意に介さない。こういう柔軟さにマルチプレイヤーとしての役者魂が垣間見える。 「今回、一番役作りで難しかったのは、実際に観ていただくと分かるんですが、関西弁でしたね。逆に言えば、それ以外は楽しく演じることができました。台本を最後まで読んで、これは凄い話だなと思ったので、自分としては勝手な安心感もあったのかもしれません。それに監督やスタッフさんも含め、陣治を愛してくれていましたからね」という阿部の言葉から、撮影現場の雰囲気は良好だったことがうかがえる。