新型コロナでセンバツ中止 「夏の日本一」に向かって 担当記者が見た鳥取城北の「春」 /鳥取
第92回選抜高校野球大会の出場校が決まった1月24日。鳥取市内の同校で吉報を聞いた鳥取城北の選手たちの顔は輝いていた。1カ月半後、感染拡大が続く新型コロナウイルスによる「開催中止」。思いもしなかった事態が待っているとは誰も想像していなかったに違いない。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 野球強豪校で知られ、関西圏はもとより、遠くは東京や沖縄からも甲子園を目指す選手が集まってくる。実家から通う部員もいるが大半は寮生活。普通の高校生とは異なる厳しい環境に身を置くことで野球のみならず、人間力を磨こうとする10代の彼らのひたむきさは尊敬できた。 試合直前まで犠打練習をこつこつと続けていた石原夢也(ゆうや)外野手(2年)。けがで戦線離脱してもできることに取り組んでいた背番号1・松村亮汰(りょうた)投手(同)――ら。阪上陸投手(同)は入寮直後はホームシックにかかり涙がこぼれることもあったが「徐々に家へ連絡してくる回数も減り、新チームになってからは顔つきも変わった」と母ルミさん(51)を驚かせた。 2019年夏の鳥取大会決勝では県内のライバル・米子東に逆転負けを喫した。間近で見た先輩の悔し涙を通じ、聖地へ足を踏み入れることの難しさを知っていたはずだ。秋の県大会、中国地区大会と取材を続けてきて、彼らが家族や応援してくれる人々にひのき舞台での雄姿を見せられる機会を得たことが、記者もなんだか誇らしかった。 「地元の友人がうちわを作って応援に来てくれるって」。主将の吉田貫汰内野手(2年)が年末年始に京都に帰省した後、記者に報告してくれたときのうれしそうな顔を忘れることができない。「夏の甲子園で日本一」。涙を拭いて前を向き、この目標を実現してくれると信じている。【小坂春乃】