「黒い雨」の正体に迫る 原爆投下後に降った雨の跡残る金屏風 研究進む 広島
そのころ、自宅の玄関に飾ってあった金屏風にも「黒い雨」が降り注ぎました。 増田理 さん 「爆風で屋根が全部飛んで、そこへ雨が降って、たまたま飾っていた金屏風に雨が降って跡がついたということですね」 金屏風は増田さんの曽祖父が購入したものでした。戦後は飾られることはありませんでしたが、代々受け継がれてきました。 「黒い雨」が降った事実を多くの人に伝えるため、自宅を建て替えたタイミングで寄贈を決めました。 増田理 さん 「『黒い雨』が降ったという証しですよね。健康被害についてもテレビで見たりすると、私も被爆2世なので、やっぱりそういうのを聞けば気にかかるので、何かのお役に立てればと」 ■“強酸性”の可能性 金屏風から「黒い雨」の正体に迫る 「黒い雨」の研究を続ける、京都大学 複合原子力科学研究所。 厚生労働省の委託を受けて広島大学などと研究グループを作り、▽被爆直後の気象状況を計算で再現したり、▽土壌に残る放射性物質を検出したりして、「黒い雨」が降ったエリアを調べています。 この研究の一環として、金屏風の一部を切り取り、分析を進めています。 研究グループの代表、五十嵐康人 特任教授は「黒い雨」の成分が明らかになれば、雨が降ったエリアの特定につながる可能性もあると話します。 京都大学 複合原子力科学研究所 五十嵐康人 特任教授 「『黒い雨』の成分が本当は何だったのかということはいくつか論文がありますが、必ずしも明確ではないので、『黒い雨』を直接受けたという資料(=金屏風)が新規に見つかったのであれば、そこから新しい『黒い雨の指標』となる物質が探せないかというのが基本的な最初の出発点です」 分析の結果、▽屏風の表面は「金箔」ではなく銅と亜鉛の「合金」だったことが分かりました。▽雨の跡からは原爆由来の放射性物質は検出されませんでした。長い年月の間に放射能が微弱になったためということです。 今のところ、明白な指標となる物質は見つかってはいませんがー。