令和の家づくりの新常識「家族みんなでテレビを観ない今の時代、広いリビングはいらない」
---------- 人生でいちばん高価な買い物、マイホームをせっかく建てたのに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人があまりに多いのはなぜなのか? 気鋭の建築家・内山里江氏は言います。 「日本人が家づくりに失敗する最大の理由は、たとえば『家は南向きじゃなきゃダメ』とか『窓は大きいほうがいい』といった『間違った常識』によるものです。私は本書でそうした間違った常識をすべてひっくり返します」 内山氏の最新刊『家は南向きじゃなくていい』から、間違いだらけの家づくりをしないための方法を連載形式でお届けします。 前編記事<「新築ではLDKを広くしたい」問題。気鋭の建築家が疑問に思う“広いダイニング”の必要性> ---------- 気鋭の建築家が疑問に思う“広いダイニング”の必要性
リビングで何をして過ごすのか
同じように、リビングを設計する際も生活習慣を意識することが大事です。「広いリビングがほしい」とおっしゃるわりには、「リビングで何をして過ごします?」と尋ねると、「あれ、そういえば、いつもは何をしているっけ……?」と返ってくることが多いからです。 この傾向からもわかるように、リビングは意外にはっきりとした目的のない場所です。なかには、「忙しくてリビングでのんびりする時間なんかない」とおっしゃる人もいます。であれば、リビングではなく別の場所にスペースとお金を割いたほうがよい可能性もあるのです。 また、リビングを広くする必要性は年々減ってきています。なぜなら、テレビを見る習慣のない人が増えているからです。 ひと昔前の家のリビングを思い出してみてください。テレビに対面する形で大きなソファが置かれていたのではないでしょうか? 要するに、ソファに座ってゆっくりテレビを見るためのリビングスペースだったわけです。 しかし、今やテレビよりもスマホやパソコンでSNSや動画を見る時間のほうが長い人がどんどん増えています。家にテレビを持たない人も増えてきています。となると、ソファも必ずしも必要ではありませんし、ソファがなければそこまで広いスペースも必要にはなりません。 ソファがなくても、ラグやマット、カーペットを敷いて、プフなどの大きめのクッションをいくつか置いておけば、それで十分くつろぎのスペースはつくれます(写真)。掘り込み式にしたり、逆にアップフロア(小上がり)にしたりして、特別感のある空間をつくることもできます。そこからテレビや動画を見たければプロジェクターで壁に映すような仕組みをつくれば、テレビ本体がなくても問題はありません。 どのようなリビングにするかは、「普段、何をして過ごしているのか」「どのようなくつろぎ方をしたいのか」をしっかり考えることが欠かせないのです。