「松山英樹」が盗難被害、臨時キャディと優勝、腰痛で棄権…五輪銅メダル後の“アップダウン”を乗り越え年間王者に輝けるか
ロンドンでまさかの盗難被害
パリ五輪で見事銅メダルを獲得し、弾けるような笑顔を輝かせた松山英樹だが、どうしたわけだか「その後」は山あり谷ありの「激動」を体験中である。まずは、目まぐるしいその動きを振り返ってみよう。 【写真】「急なのにありがとう!」 第1戦の臨時キャディ「田渕大賀」に熱視線
五輪後の松山は、すぐさまPGAツアーで3試合にわたる「プレーオフ・シリーズ」が始まるとあって、パリから米国へ移動しようとしていた。 しかし、その経由地ロンドンの空港で盗難被害に遭った。松山自身は財布を、一緒にいた早藤将太キャディと黒宮幹仁コーチはビザが付いたパスポートを盗まれた。松山本人のパスポートが無事だったことはせめてもの幸運だったが、米国入国が不可能となった早藤キャディらは、ロンドンから日本へ緊急帰国せざるを得なくなった。 相棒キャディを伴ってプレーオフ第1戦のフェデックス・セントジュード選手権(米テネシー州メンフィス、TPCサウスウインド)に臨むことができなくなった松山は、同じPGAツアー選手の久常涼をサポートしていた田渕大賀キャディに臨時キャディを依頼した。 久常涼はすでにレギュラーシーズンを終えて帰国していた。田渕キャディも日本に戻っていたが、松山からの突然の依頼に驚くやら喜ぶやらで、すぐさま試合会場の米テネシー州メンフィスへ飛んだ。
「それがあったから勝てたんじゃないかな」
松山と田渕キャディは、初めてペアを組んだとは思えないほどの絶妙なコンビネーションを発揮し、見事、勝利を挙げて周囲を驚かせた。 最終日の松山は、一度は逆転されながらも踏みとどまり、立ち直り、そして最後は2連続バーディーを奪って再逆転。見事な勝ちっぷりには、世界中から賞賛と羨望の眼差しが向けられた。 松山が優勝賞金360万ドル(約5億4000万円)を手に入れ、フェデックスカップ・ランキングを8位から3位へ急上昇させたことは「すごい」の一言だった。盗難被害に遭ったショックも、臨時キャディと戦うというハンディキャップも乗り越え、執拗なゴルフで勝利したことは、「すごい」を超えて「あっぱれ」「お見事」だった。 優勝会見では、驚き交じりの米メディアから「ロンドンであんな出来事があったのに、なぜ今週、勝てたと思うか?」と尋ねられた。 「それがあったから勝てたんじゃないかな。プラス思考で。それがあったから勝てた」 松山の返答は、小粋で素敵だった。さまざまなピンチを克服して挙げた勝利が、自身通算10勝目の節目のビクトリーとなったところにも、松山が持って生まれた運命的な「何か」を感じずにはいられなかった。 「10勝目ということ。そしてプレーオフで勝つことができて、本当にうれしい。このプレーオフで優勝することを、ずっと目標にしていたので、本当にうれしい」