不倫ドラマはもはや一つのジャンル セカパ、複数愛も 現代の愛の形を検証
6月10日に公開が迫った上戸彩主演の映画版「昼顔」、放送中の波瑠主演の連ドラ「あなたのことはそれほど」(TBS系)など、不倫はドラマの1カテゴリーであるかのように定番化している。それほど関心を寄せる人が多いということでもあるのだろうが、最近は不倫と紙一重といえなくもない“セカンドパートナー(セカパ)”が話題に上ったり、ある意味、不倫を超えているともいえそうな“ポリアモリー(複数の愛)”がリバイバルするなどしている。時代や社会の変化とともにモラルは変わるが、現代人の家庭生活や性生活はこれからどこへ行くのだろう。
セカンドパートナーとは? ポリアモリーとは?
セカンドパートナーは、原則として肉体関係は持たない(性交はしない)、最後の一線は守った形で交際する、配偶者とは別の異性なのだとか。肉体関係を持てばその時点で不倫であり、不貞行為となる。それをしないことで、あくまで配偶者との関係、家庭を第一に置くことができる。しかし精神的にはともすると配偶者より深い結びつきがあったり、配偶者と死別後は結婚する約束を交わしていたりもする。穏やかな話ではないような気がするが、配偶者もセカンドパートナーの存在を認めている場合があるらしい。 一方、ポリアモリーはセカパとは異なる。80年代にワシントン大学で臨床心理学の博士号を取得したデボラ・アナポール氏が、自らの結婚・離婚を重ねた体験を通し複数の異性との愛を探求、84年にはセンターを立ち上げ、世界的なムーブメントを主導したもの。 全米ベストセラーになった著書が日本でも約20年前に刊行されて話題になったが、最近またリバイバルしているという。複数の異性と精神的・肉体的に結ばれることで、「完璧な異性が欲しい」という欲求を満たすのだそうだ。要は、デートはデート上手な相手と、セックスはセックス上手な相手と、といったように適材適所のパートナー関係を結ぶことで、充足感を得ることができるというわけだ。 母子・家族問題研究家の麻生マリ子氏は、「わかりやすく言ってしまえば、いいとこ取り。清濁併せ持つのが人間だし、いい点もあれば欠点もあるのが人間ですが、欠点を受け入れられない。そういう人は昔からいます。最近ではLGBTもそこに入ってきているかもしれませんね。たとえば女性であれば、複数いるパートナーの中には、男性の嫌な部分を補う女性のパートナーもいる、などです」と話す。 何やらややこしい話になってきたが、「家には家長たる父親と母親がいて、子どもがいて……」といった昭和の家庭像はすでに薄れつつあるのは事実。今後、ますますこうした傾向は拡大していく可能性があるという。 「草食化と表裏一体なんですよ。特定のパートナーとステディな関係が結べない裏には、傷つくのを恐れる気持ちがあったりするわけです。晩婚化や、恋愛は面倒なのでしない、といった人たちが増えている時代です。こうした風潮とともに、ポリアモリーも加速するのではないでしょうか」(麻生氏) 友達とデートして、セックスまでするのに、けっしてステディな関係にはならない……そんな風潮も、もはや当たり前か。親にはそれぞれセカンドパートナーがいて、子どもはポリアモリーで……なんて家もすでにありそう。そう考えると、不倫ドラマもある意味、純愛に思えてくるから不思議だ。 (文・志和浩司)