FC今治・岡田武史オーナーが語る新型コロナ克服後の世界観「戦いを乗り越えたときに社会が変わるのではないか」
予断を許さない状況が続くなかで、岡田氏の視線はいわゆる「ポストコロナ」へも向けられている。 2014年11月に今治を運営する株式会社今治.夢スポーツの代表取締役会長に就任し、2018年3月には日本代表やJクラブの監督を務める上で必要となる、最上位のS級ライセンスを日本サッカー協会へ返上。指導者ではなく経営者として奔走してきた岡田氏は、こうも綴っている。 「この新型コロナとの戦いを乗り越えたときに、社会が変わるのではないかと思っています。よく言われるように、Eコマースでの売買が増えたり、在宅勤務やサテライトオフィスなどが増えるでしょう。また、余暇の過ごし方も娯楽性を追うだけではなく、近くの公園などで散歩やジョギングやスポーツを楽しんだり、自然の中でピクニックをしたりと変化するのではないでしょうか」 猛威をふるい続ける新型コロナウイルス禍は、世界各国の間で人や物の移動を大幅に滞らせた点で、グローバル化が促進されてきた資本主義を変質させると言われている。お金を中心とした価値観が転換期を迎えるごく近い未来を、経営者の視点から岡田氏も見すえていることは、メッセージの最後に綴った「社会が変わる」という言葉に対する答えからも伝わってくる。 「つまり、物から事の消費という環境にやさしいライフスタイルであり、共感、信頼、関係など数字で表せない『目に見えない資本』を大切にする社会です。それは、我々の企業理念である『心の豊かさを大切にする社会』が実現していくことだと思っています」 メッセージのなかで綴られてきた岡田氏の言葉は、形の上ではファンやサポーターを含めた、今治を取り巻くすべての人々へ向けられたものだ。しかし、指導者として数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験が重みを与えているからか。読み返すほどにサッカー界を飛び越えて、日本社会全体をもうなずかせる明確さと不思議なほどの説得力を帯びていることがわかる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)