「カープの一員でありながら、客観的に試合を見ることができる」。久本祐一が考える打撃投手のやりがい
カープ球団を支える人たちにスポットライトを当て、裏側の仕事について探る本連載。今回は、現役時代に中日、広島の2球団で活躍した久本祐一さんが登場。現役引退後は打撃投手としてチームを支えている久本さんに「打撃投手のやりがい」や、「現役時代との違い」について聞いた。(全3回/2回目) 【写真】現在はアナリストとしてチームを支える一岡竜司氏 打撃投手の1日のルーティンは、選手たちとはかなり異なります。遠征があればチームに帯同しますが、お昼頃に球場に入って、選手たちの練習が始まる前までにウォーミングアップをして、打撃練習での登板が終われば基本的には家や宿舎に帰ります。試合前には、球場を離れていることが多いですね。 現在、カープの打撃投手は8名ほど在籍していて、一軍担当、二軍担当に分かれています。僕のような左投手もいれば右投手もいて、対戦相手の予告先発投手が右投げか左投げかによってメインで投げる打撃投手を首脳陣が決めています。 僕が打撃練習での登板で気をつけているのは、『打者の反応を見ること』です。打者がどんな反応をするかを観察して、調子が悪いのか、もし調子が悪いのであればあえて真ん中に投げてみて……と、相手の反応に合わせて投げる球も変えるようにしています。 打撃投手としての一番のやりがいは、『野球を客観的に見ることができる』ことにあるのではないかと思っています。 打撃投手というのは不思議な存在で、もちろんチームの一員ではあるのですが、その一方では試合の前に球場を離れて家で試合中継を見るなど、外からの目線でチームや試合を見ることができます。 子どもの頃はプロ野球の試合を観戦することもありましたが、自分がプロになってからは、客観的に試合を見る機会というのはあまり多くはありません。「ファンのみなさんはこんな目線で試合を見ているんだな」と思いながら試合を見ることができるのも、この仕事の面白いところではないかと思います。 ただ、やはり職業病なのか、気になるのは主に投手なんですよね。「この投手は交代しそうだな」とか、「ピンチのときはそわそわしているな」とか。そういう姿を見ていると、「自分も現役時代はそうだったのかな」と、当時を振り返ることもあります。 これからは、自分自身の現役時代の経験と、客観的に野球を見ている現在の仕事を通じての経験を重ねながら、僕だから伝えられることを、野球をしている子どもたちにも伝えていければ良いと思っています。 (3回目へ続く)
広島アスリートマガジン編集部