まやかしの年金改革 給付を減額する「マクロ経済スライド」の問題点
昭和女子大特命教授の八代尚宏氏は毎日新聞政治プレミアに寄稿した。 基礎(国民)年金の保険料について、現行の20歳から60歳までの納付期間を65歳まで5年間延長する案があることについて、「マクロ経済スライドという、年金給付を毎年削減する仕組みが今後本格的に発動されることに備え、あらかじめ金額の少ない国民年金の給付額を積み増す必要があるからだ」と語った。 【写真】社会保障審議会年金部会の様子 八代氏は「まさに、『削減しやすいように保険料と給付を増やす』ための準備といえる」と言う。 そのうえで、「日本では、長寿化で給付期間が長期化することによる年金費用の膨張を、毎年の給付額を削減することで抑制する手法を選択した。これは一度制度化すれば、後は自動的に、毎年の物価上昇率の範囲内で発動できるため、政治的には容易な手段だ。しかし、これでは物価上昇率に応じて給付額をスライドさせ、その実質価値を保全する公的年金の本来の機能が損なわれる」と指摘した。