香港返還から27年 民主化運動の舞台が日本へ?【WBS】
27年前の7月1日は、香港がイギリスから中国に返還された日です。香港では、返還から50年間は「一国二制度」のもと中国本土とは違う「自由」が保障されているはずでした。しかし、その約束の50年を待たずに自由は失われ、「言論」への締め付けも強まっています。一方で、香港では続けられなくなった民主化運動ですが、その舞台がいま日本などに移ってきています。 1日、香港返還27年を祝う記念式典。 「香港は家族としてまもなく2頭のジャイアントパンダを迎える」(香港の李家超行政長官) 香港政府のトップが中国政府からパンダが送られることを明かし華やかさを演出する一方、足元で進むのが香港の中国化です。 2019年の民主化を求める大規模デモを受けて2020年6月、反政府的な言動を取り締まる国家安全維持法(国安法)が成立。日本でも有名な民主活動家の周庭さんなど民主派の人物が次々と逮捕されました。 さらに今年3月、スパイ行為や外国勢力の政治干渉などの摘発を強化する「国家安全条例」が新たに成立。国安法と国安条例違反で逮捕された人は299人に上り、うち175人が起訴されています。これで民主化運動は事実上封じられました。 国安条例施行について、香港政府トップの李家超行政長官は「一国二制度の実施プロセスでの重要な一里塚。香港は国家の後ろ盾と市民の努力で力強く成長している」と語っています。
香港で禁じられた民主化運動。その活動の場が徐々に日本に移っています。 香港人のアリック・リーさん。国安法を恐れ2020年に香港を離れて、以前暮らしていた日本に移りました。現在ある活動を続けています。2019年の大規模な民主化デモで象徴となった香港版民主の女神像。その制作を中心とした日本での抗議活動です。 「香港で出していた民主の女神像を日本に再建したい」(香港民主化を目指す「レディーリバティー香港」のアリック・リー代表) 天安門事件で学生が作った像がモデルですが、香港版は香港警察の実力行使から身を守るため、ゴーグルとヘルメット、防毒マスクをつけ、自由を求める傘や旗などを持っています。アリック・リーさんはこの像の3Dデータを世界に公開したほか、香港の民主派アーティストの展示会を開催。日本から香港の現状を発信しています。 「日本と台湾は反中国の最前線になっている。日本はすごく安全な所だと思う。今のところ怖い感じはないが、香港に残っている両親のことを心配している」(アリック・リー代表) 実は民主化運動の最前線に位置づけられている日本。先月香港の民主活動家が集まりました。世界の人権問題などについて話し合う初めての日本香港民主主義サミットです。 香港当局に国安法違反で指名手配され、イギリスに亡命したフィン・ラウ氏やサイモン・チェン氏なども来日しました。アリックさんも主催者に名を連ねました。 海外からの参加者もいました。 「日本と台湾と香港がつながるのはいいことだ。何か一緒に運動ができるはずだ」(台湾で暮らす香港人) 「権威主義的な政府の野望が大きくなっている。日本やカナダの民主主義社会が自由を守るために連携しないといけない」(カナダ人) このサミットの成果を発表する場には、与野党の現職国会議員も参加。参加者たちは、中国政府が国外で影響力を強めていることに警鐘を鳴らしたほか、日本政府に香港人の亡命者への支援などを訴えました。 「法の秩序・言論の自由・思想の自由は人間にとって等しく与えられた平等の権利だ」(前国際人権問題担当総理補佐官の自民党・中谷元衆院議員) そして香港返還27年を迎えた1日、札幌でアリックさんの団体がアートの展示会を開催。そこには、香港に残り、匿名で、命がけで活動する民主アーティストの作品も展示されました。 「彼らが今も届けようとしている作品を展示することで、日本の人が私たちの奮闘・恐れ・希望や目標を理解してくれるよう願っている」(アリック代表)