フェイスブック投稿監視で140人以上が心的外傷、ケニア裁判所に診断書提出
(CNN) SNS大手フェイスブックの不適切投稿を監視していたケニアのコンテンツモデレーター140人以上が心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患と診断され、フェイスブックの親会社メタなどを相手取った集団代表訴訟の一環として、原告側が裁判所に診断書を提出した。 【画像】裁判前に協議を行う弁護士や判事 診断したのはケニアの首都ナイロビにあるケニヤッタ国立病院精神衛生科部長のイアン・カニャニャ医師。診断書は今月4日、市の雇用労働関係裁判所に提出された。 この裁判は、メタに加えてフェイスブックがコンテンツモデレーター業務を外注しているサマソース・ケニヤが被告となっている。 不適切コンテンツを監視・管理するコンテンツモデレーターの業務は、途上国などの企業に委託されることが多い。しかしモデレーターの心の健康に与える影響については何年も前から懸念の声が上がっていた。 メタは裁判が係争中であることを理由に診断書についてのコメントを避けた。ただ、モデレーターのサポートには真摯(しんし)に取り組んでいると述べ、外注先の企業にはカウンセリングや研修、公正な対価を求めているとした。 同社広報によれば、モデレーターが使う「コンテンツ検査ツール」は、例えば映像や画像をぼかしたり白黒にしたりするといった調整ができるという。 一方、カニャニャ医師は、自身が診察したモデレーターについて「ほんの一例を挙げただけでも、残忍な殺人、自傷行為、自殺、自殺未遂、性暴力、わいせつコンテンツ、子どもに対する身体的・性的虐待、恐ろしい暴行などの過激なコンテンツ」を毎日のように見せられていたと指摘する。 自発的に心の健康診断受けたコンテンツモデレーター144人のうち、81%が「重度の」PTSDと診断されたという。 原告を支援している英NPOのフォックスグローブによると、この裁判は2022年、フェイブックの元モデレーターが不当な労働条件に対する抗議デモを組織して解雇されたと主張して、サマソース・ケニヤを提訴。その後、集団代表訴訟に発展した。 ナイロビにあるサマソース・ケニヤのモデレーション拠点では昨年、モデレーター260人全員が、給与と労働条件について懸念を表明した「罰」として解雇されたとフォックスグローブは主張する。 裁判に加わっているモデレーターは、19年~23年の間にサマソース・ケニヤに勤務していた。 CNNが診断書を参照したモデレーターは、仕事中に見たコンテンツに関連する悪夢にさいなまれ、冷や汗をかいて目が覚めると証言。結果として頻繁な神経衰弱、生々しいフラッシュバック、被害妄想に襲われるようになった。 別のモデレーターの女性は、腐敗した人の手からウジ虫がはい出す画像を見て、小さな穴の集合体に恐怖を感じるトライポフォビア(集合体恐怖症)を発症した。 フォックスグローブのマーサ・ダーク共同代表はフェイスブックのコンテンツ監視業務について「危険で死を招くことさえあり、モデレーターほぼ全員に生涯続くPTSDを発症させる」と指摘。「ケニアでは、PTSD検査を受けた元モデレーター数百人の100%が心的外傷を負った。フェイスブックには、生涯続くかもしれない心的外傷の責任がある。大抵は学校を卒業したばかりの若者だった」と訴えている。