いま日本に必要な「アインシュタイン型の天才」…永世七冠・羽生善治も困惑する「藤井世代」衝撃の実態
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第14回 『「究極の個人情報を売り渡している」…ノーベル賞科学者・山中伸弥が警告する、誰も知らない恐ろしすぎる「罠」』より続く
藤井聡太四段は何が違うのか
山中 藤井聡太四段の登場で将棋界が盛り上がっていますね。 羽生 もうすごいことになっています。藤井さんを含め、今まで中学生で棋士になった人は5人います。ただ、そうは言っても、10代のころはみんな「ここは強いけれど、ここは弱点」といった粗削りな部分が必ずあるんですよ。でも藤井さんにはそういったところがまったく見当たりません。すごく完成されています。連勝の新記録樹立もすごいのですが、連勝中、対局の中ではっきり不利になって危なかったと見えた局面は数えるほどで、ほとんどは圧勝です。これはものすごいことです。 山中 何が違うんですか。 羽生 わからないです。何が違うかわかりません。 山中 そうですか。羽生さんがわからないのなら、僕らは絶対わからない(笑)。藤井さんがコンピュータで将棋を研究していることと関係があるんでしょうか。
藤井四段が天才である理由
羽生 いや、ほかの棋士たちも使っていますから、多分それはあまり大きな要素ではないですね。藤井さんが仮にコンピュータを使っていなくても、強くなったことは間違いありません。彼はもう10歳くらいから詰将棋の世界ではすごく有名でしたから。 まず四段になろうと思ったら、最低限の定跡やセオリーを身に付ける必要がありますけど、それを習得するにはけっこう時間がかかるんです。すべて押さえるまでに20歳くらいになっていてもおかしくありません。ところが藤井さんは14歳でほとんどすべてに対応しています。これは驚くべきことで、もうセンスが抜群にいいとしか言いようがありません。 山中 若いのに話し方が何か人生を達観しているような感じですよね。 羽生 将棋だけじゃなくて、受け答えもしっかりしていて感心します。先日、将棋連盟の総会があって、新人が挨拶をする場で、藤井さんは中学校に行かなければいけないので、師匠の杉本昌隆七段がメッセージを代読していました。「藤井に代わりまして、師匠の私、杉本がメッセージを預かってまいりました」という挨拶で会場は大爆笑でした(笑)。これからもちろん本人は大変ですが、師匠を含めた周りもどう育てていくか大変だと思います。それにしても、卓球の張本智和君も10代前半ですが、何かゴールデンエイジみたいなものはあるのかもしれないですね。