【後篇】激論! 09年型日産GT‐Rとポルシェ911GT2、速いのはどっちだ? 911ターボ・ベースの怪物公道レーサー、GT2にサムライ・スーパーカー、日産GT-Rは勝てるのか?
「一発でわかるだろう? 箱根を走っただけでどっちが速いか!」
中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2009年の7月号に掲載した 09年型GT‐RとそのスペックV をポルシェ911GT2と比較するという意欲的な記事を取り上げる。R35型GT‐Rの開発のベンチマークとなった911ターボ。その911ターボ・ベースの怪物公道レーサー、GT2にサムライ・スーパーカーは勝てるのか? エンジン編集部熱血クルマ三バカ士が判定員をつとめた全開リポート。第2章 町乗り&日常性能「GT‐R基準車、使い勝手ベスト!」に続いて、第3章では高速道路、第4章の山岳路 のインプレッション、そして結論をお送りする。 【写真25枚】サムライ・スーパーカーの日産GT-Rと怪物ポルシェ、911GT2の真っ向対決の詳細画像はこちら ◆第3章 高速道路「GT‐Rは楽ちん」 ――高速道路は? スズキ GT‐Rは楽ちんだよ。GT2がいちばんむずかしい。 齋藤 やっぱりカップ・タイヤの影響がすごく大きいと思う。 スズキ それと、うねりのある路面ではピッチングがある。道が悪くなると、GT2は鼻歌気分ではむずかしい。GT‐Rはアウトバーンで280km/h出したけど、なんてことない。まあ、アウトバーンは道がいいけどね。 村上 日本仕様は6速4000rpmでリミッターが働く。許容回転は7000だから、あと3000rpmもある。だからGT‐Rはホントに楽ちん。矢のようにまっすぐ走る。 スズキ GT2の場合、たいがい6速入れっぱなしでなんら問題ない。GT‐Rはデュアル・クラッチ式をオートマチック・モードにしておけば、アクセルを踏んでいるだけ。ただスペックVのほうが若干、ロード・ノイズ等、環境騒音は入る。 齋藤 後ろから聞こえてくる音質が違う。スペックVはリアのキルティングをはがすとモノコックのスチールがむき出しになっている。あそこにシートがあるのと、布1枚では遮音がぜんぜん違う。 スズキ 燃費は、定評あるポルシェとそん色ない。今回のテストでは満タン法で2台とも6km/リッター台。山道込みだから、日産のテクノロジーのレベルも高い。 齋藤 どっちもその分野では人後に落ちない自負がある。 ◆第4章 山岳路「怪物vs未来」 ――スポーツカーとしてのハンドリングはどうでしょう? 村上 RRで500ps超のGT2は、基本的には怪物と闘っているみたいなシロモノだと思う。それに比べて電子制御4WDのGT‐Rは、とにかく「新しいクルマ」なんですね。走りの質自体が、デジタルというか、軽くて未来的に感じる。 スズキ スポーツカーの本家が仮にイギリスだとすれば、戦後のある時代、ポルシェも妙チクリンなミュータントだったんじゃないかな。 村上 GT‐Rもやがてはいまの911みたいに普遍性を持つと? スズキ テクロノジーの進化の方向として2WDから4WDへと来ているしね。GT‐Rのエライところは、スペックVがいちばん楽しかったけれども、ハンドルなりというか……。 齋藤 曲がりたい方向に曲がっていく。911ターボとGT2は運転の容易度がぜんぜん違う。だけど、GT‐Rは基準車とスペックVとで、運転の容易度が変わらない。驚くよね。 スズキ スペックVのほうが軽くて、清純な清流のなかにいるみたいなさわやかさがある。基準車はもうちょっと、もっさりはしていないんだけど、粘ってくる感じはある。 齋藤 だけど東京で使うんだったら、スペックVはきびしいところだけが出ちゃう。 スズキ ストレスをぶっ飛ばす、というんだったらスペックVだよ。GT2もスペックVに近い。ま、免許は保証できないけど。 ◆第5章 テスト・チームの評決「個人的選択はどれ?」 ――パーソナル・チョイスを。 スズキ 僕はGT‐R。そのなかで選ぶならスペックV。1000万円以上のクルマに実用性を求めない、という立で。だけどスペックVは実用にもなる。メインテナンスの問題は度外視して。 齋藤 高性能車の維持費はフェラーリだってポルシェだって半端じゃない。ヴェイロンなんてタイヤ4本で400万円。スーパーカーに乗るというのはそういうこと。それができないひとは買っちゃダメです。 スズキ わかった。で? 齋藤 自分で選択するとなると、基準車で「コンフォート」で乗る。スペックVとGT2は純度が高くてすごいけど、あの上下動に僕の体が耐えられない。自分の体重である程度抑えが効くひとでないと無理。 村上 僕はGT2です。 スズキ GT2は2600万円だからなぁ。仮に1600万円だったら買えるのか、という話はあるけど。 村上 買える可能性でいったら、基準車しかない。それはもう。 ――GT2はニュルブルクリンク、7分32秒。値段性能比では及ばない。 齋藤 速さではGT‐Rだね。 スズキ それは一発でわかるだろう、箱根を走っただけでどっちが速いか。 齋藤 だって変速にかかる時間がぜんぜん違うもの。 村上 でも、それだけじゃないかなぁ。直線を走っているときの速さはGT2のほうが速い。 スズキ いや、絶対GT‐Rのほうが速い。だって箱根ターンパイクを走って、あ、もう着いちゃった、というのはスペックVのほうだよ。 村上 GT2だってそう思います。 齋藤 GT2は0―100km/h加速3.7秒。GT‐Rは3.5秒。 村上 加速感ではGT2のほうが圧倒的に速いんだけどなぁ。 ――水野さんはGT‐Rを「生きる力」と呼んでます。「作品」としてはどうですか。 スズキ 作品力はあるね。僕たちはガイシャに憧れてきたから、ガイシャっぽくないというところでちょっとひっかかりがあるわけでしょ。だけど、そうじゃないひと、たとえばガイジンの人気はスゴい。 齋藤 自動車先進国のマーケットでゆいいつ尊敬されている日本車でしょ。あとはマツダ・ロードスターぐらいしかない。 スズキ GT‐Rは結局どれにも似ていないクルマだ、といいたかった。自分が知っているなにかのクルマになぞらえると、GT‐Rを見誤るというか、せっかくGT‐Rの持っている新しい価値をはねつけちゃうことになりかねない。GT‐Rはとにかく運転がむずかしくない。09年モデルはスペックVも含めて、さらにむずかしくない度合いが上がった。ダンパーの中央値がちょっと違うんだって。それぐらい微妙なところで、これだけ変わるというのもいままでの量産車ではなかった。 齋藤 本来、量産車でやらないことをやっているところがスゴいよ。 村上 毎年毎年こんなによくなっていくんだったら、楽しみです。 ――編集部の判定。GT‐R2票、GT2、1票でGT‐Rの勝ちです。 語る人=ENGINEテスト・グループ(鈴木正文+村上政+齋藤浩之) 写真=望月浩彦 (ENGINE2009年7月号)
ENGINE編集部
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