世界の金融市場が警戒する「トランプノミクス2.0」:日本には深刻な円高リスクも
「もしトラ」で「トリプル安」懸念
スイスのダボスで1月15日から始まった世界経済フォーラム(WEF)年次総会、通称ダボス会議では、今年11月の米大統領選挙に勝利してトランプ前大統領が返り咲くことを警戒する議論が、参加者の間でかなり高まりそうだという。 ブラックロックのヒルデブラント副会長はブルームバーグTVのインタビューで、トランプ氏の大統領返り咲きを、「大きな懸念事項」と語っている。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、トランプ氏が再選されれば欧州にとって明らかな「脅威」になる、と発言している。 金融市場もトランプ前大統領の返り咲きを、強く警戒している。同氏の米国第一主義が、先進国の結束を再び揺るがせてしまうこと、先進国の軍事的な連携を弱めることでロシアなど米国と対立する国を利することになり、地政学リスクを高めてしまうこと、輸入関税の導入が物価環境を再び悪化させてしまうこと、ドル安政策や財政拡張路線が、金融市場を不安定にさせること、米連邦準備制度理事会(FRB)との間で金融政策を巡る対立が強まり、通貨の信認を損ねてしまうこと、などが大いに懸念されている。 もしトランプ前大統領が返り咲いた場合には何が起こるのか、ということは、日本の金融市場では「もしトラ(もしもトランプが返り咲いたら)」とも表現されているが、その場合、米国金融市場はドル安、株安、債券安の「トリプル安」の反応となるだろう。
「トランプノミクス2.0」:輸入関税導入が物価の安定を妨げる可能性
経済政策面でトランプ氏を支えているのは、トランプ政権時と同様にクドロー元国家経済会議(NEC)委員長やハセット元大統領経済諮問委員会(CEA)委員長らである。 そして、トランプ氏が大統領選挙を制する場合に実施される経済政策、いわゆる「トランプノミクス2.0」については、現時点では以下のような想定ができるだろう。 貿易政策については、トランプ氏は国内産業を保護する観点から、輸入品に10%の関税を上乗せすることを検討している、と言われる。仮にそのような政策がとられる場合、関税分の輸入品(財)価格上昇が国内製品に完全に転嫁されるとの仮定のもとで、国内需要デフレータを1.2%上昇させる計算となる。そうした政策は、物価の安定回復に水を差してしまう可能性がある。それを通じて、個人消費にも逆風となるだろう。