日本と韓国、どちらが豊かなのかの最終結論…平均賃金は韓国のほうが上であるという明確な事実をどうとらえるか
日本と韓国のどちらが豊かなのか?
以上の検討によって、国民1人当たりGDPと平均賃金、あるいは生産性(就業者数当たりのGDP)のどれを見るかによって見え方が異なる場合がある理由が分かった。しかし、「では、どちらの国が豊かなのか?」という問題が依然として残っている。 1人当たりGDPは、一見したところ「国民1人当たりで1年間にどれだけを使えるか」を示しているように思われる。 しかし、GDPの中には、消費だけでなく、設備投資や政府支出も含まれている。これらは、個人の支出ではない。 さらに、GDPには固定資本減耗引当が含まれている。これは、誰の所得にもならない。それに対して、賃金は、就業者が自由に使える。 その意味では、平均賃金が高い国のほうが豊かだと言えよう。また、賃金が高ければ、一定の所得を得るための労働時間は少なくて済む。そして、働かない時間(レジャー)は、経済的な意味を持っている。それが多いという意味では、高賃金が豊かさの指標としてより適切だと言える。また、就業者1人当たりのGDP(生産性)が高いということは、高度な技術を持っていることを示すとも言える。 以上を考えると、1人当たりGDPより、賃金や生産性のほうが豊かさを適切に表している指標だと考えることができるだろう。 写真/shutterstock ---------- 野口悠紀雄(のぐち ゆきお) 1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省。72年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『プア・ジャパン』(朝日新書)、『「超」創造法』(幻冬舎新書)ほか多数。 ----------