JR貨物、初の内航船が進水。センコーと共同発注、早期災害対応可能に
JR貨物(犬飼新社長)とセンコーグループホールディングス(GHD、福田泰久社長)が共同発注した499総トン型内航貨物船「扇望丸」の進水式が5日、矢野造船(矢野均代表取締役、今治市小浦町)で執り行われた。JR貨物にとっては初の内航船保有となり、8月就航を予定する。自然災害発生の頻度が高まり、鉄道輸送にとって代替輸送確保が重要となる中、船舶を自社保有することで早期の災害代行輸送を可能とする。 新造船の保有比率は、センコーグループ70%、JR貨物30%。通常時はNSユナイテッド(NSU)内航海運が用船し、自然災害などで貨物鉄道ネットワークが寸断された場合には、JR貨物が実施する災害代行輸送に投入することを想定している。長さ70メートル、幅12・5メートル、深さ7メートル、満載航海速力約12・2ノット、載貨重量トン数は1600トン。12フィートコンテナ80個を積載できる。コンテナや一般貨物、鋼材などの輸送を想定する。 従来、災害時に鉄道・トラック輸送が寸断された際、JR貨物はその都度利用可能な内航船を探し、チャーターしてきた。内航船の共同保有により、迅速に代替輸送を提供できる。 進水式ではJR貨物の犬飼社長が命名、犬飼社長夫人の敦子さんが支綱切断を行った。 その後開催された進水祝賀会で、矢野造船の矢野代表取締役が謝辞を述べた後、センコーGHDの福田社長、JR貨物の犬飼社長がそれぞれ船主として挨拶。福田社長は「前身の新和海運時代から、NSU内航海運とは50年以上の用船取引がある。鋼材輸送だけでなく、最近では電力向け燃料輸送でも取り引きさせていただき、ますます良い関係を構築している。3年前、JR貨物から緊急時の代替輸送のための船舶を建造できないかと相談いただいたのが、今回の取り組みのきっかけ。緊急時にはNSU内航海運のご了解を得ながら、災害代替輸送をしっかり行っていく。建造いただいた矢野造船には船主目線に立った丁寧な提案をいただいた」と、関係者に感謝の言葉を述べた。 犬飼社長は「2024年問題などに起因するドライバー不足を背景に、鉄道輸送にはこれまでに無く高い期待が寄せられている。一方、昨今の自然災害激甚化で大規模な輸送障害が数年起きに発生しており、『安心して使えない』『災害に弱い』というイメージが広がりその対応に追われているのが現状。本船はJR貨物にとって初の船舶保有という画期的な取り組みで、(鉄道・海運の)輸送複線化の強化が大きな『助け舟』となることを期待している。自治体など関係者の理解を得ながら、バースの事前調整など実効性のある取り組みを進めていく」と語った。 来賓としてNSU内航海運の遠藤富士夫常務取締役が「センコー汽船と打ち合わせを重ねる中で、JR貨物の、災害時の輸送を支えたいという思いに動かされ、支援することを決めた。本プロジェクトを間接的に支援できることを誇りに思う」とあいさつした。
日本海事新聞社