ロシアの核兵器使用はどれだけ真実味があるのか クレムリンへの「無人機攻撃」で高まる緊張 プーチン氏は小型核を一時検討
ロシア大統領府が5月3日、大統領府が置かれているモスクワ中心部のクレムリンがウクライナの無人機2機による攻撃を受けたと発表した。ウクライナ側は関与を否定したが、「大統領殺害を狙ったテロ」と捉えたロシアは激しく反発。ウクライナへの核攻撃を検討すべきだとの声も上がった。 これまでウクライナとの戦闘や西側との対立が激化するたびに、ロシアは核使用の威嚇を繰り返してきた。ウクライナ軍による東部での反転攻勢も予測される中、戦術核攻撃の可能性は現時点でどれだけ真実味があるのか。米国やロシアの報道を基に検証した。(共同通信=太田清) ▽他の選択肢はない 無人機攻撃後、ロシアのビャチェスラフ・ウォロジン下院議長は即座に「(ウクライナの)テロリスト政権を破壊することができる武器の使用を求める」と通信アプリに投稿、ウクライナへの核兵器使用を示唆した。ウォロジン氏は副首相や大統領府第1副長官を歴任したプーチン大統領の側近。
また、ロシアの保守強硬派の政治家で国営宇宙開発企業ロスコスモスの社長を務めたドミトリー・ロゴジン氏は通信アプリに寄せたビデオ動画で、軍事ドクトリンによりロシアには核兵器を使用する完全な権利があり、ウクライナの攻撃を食い止める最良の手段は戦術核だとした上で「他の選択肢はない」と、戦術核使用が不可避であると強調した。 ロシア前大統領で、同国の安保問題に関する最高意思決定機関、安全保障会議の副議長を務めるメドベージェフ氏はこれに先立つ4月25日、モスクワで行われた会議で、核兵器は国家としてのロシアの基盤を成しており、国家の存在を脅かすような攻撃があった場合、核の先制使用があり得るとの考えを強調した。 ▽小型の戦術核使用、戦場でのメリットは ロシアがウクライナでの核使用を実際に検討したとの報道もある。英紙フィナンシャル・タイムズ電子版は3月26日、消息筋の情報として、西側との核を巡る緊張が高まる中、プーチン大統領が昨年秋、ウクライナでの小型の戦術核兵器使用について検討したものの、最終的に戦場でのメリットがないことから断念したと報じた。