淡路島で出合う人形浄瑠璃の“元祖” 一昨年は絶景ビーチで野外上演も! 「国生みの島」で食と文化を堪能する
#292 Minamiawaji南あわじ(淡路島・兵庫県)
兵庫県の南、瀬戸内の海に浮かぶ淡路島。面積は東京23区とほぼ同じ592平方キロメートルの、瀬戸内最大の島です。 【画像】淡路島といえば、鳴門の渦潮! 面積の大きさに加えて、北は兵庫と明石海峡大橋で、南は徳島と大鳴海門橋で結ばれ、本州や四国からクルマで行き来ができるせいか、“島”という印象をあまり受けません。 今回はクルマで神戸方面から明石海峡大橋を渡って、淡路島へ。全長3,911メートル、世界第2位の長さの吊り橋です。フロントガラスから間近で見る大橋は、巨大な主塔と無数のケーブルが続き、まさに人類の叡智を結集したというにふさわしい壮大な建造物です。 淡路島は南北55キロ、東西28キロと細長く、今回目指す南端の南あわじまでは、大橋を渡り終えてからさらに1時間半のドライブが続きます。 島の南には鳴門海峡、西には播磨灘、島内の北や南東には山地、そして内陸には三原川流域に広がる肥沃な三原平野。瀬戸内式気候で年平均気温も15度と暖かく、豊かな食材に恵まれています。
飛鳥・奈良時代から続く「御食つ国」、淡路島
地理的、気候的な好条件に加えて、高い技術をもつ淡路島では、有名な玉ねぎをはじめ、白菜、レタス、米などを組み合わせた三毛作も行われています。さらに「淡路ビーフ」に「淡路島牛乳」、「淡路島えびす鯛」に沼島(ぬしま)のハモなど、おいしいものが、たくさん! 訪れた12月中旬は、玉ねぎの収穫後。名物の「玉ねぎ小屋」には玉ねぎがびっしりと吊るしてあり、あたりには特有の甘い香りが漂っていました。道路脇にはネットに入った玉ねぎを並べる露店も。淡路島産の玉ねぎは甘くてやわらか、そしてみずみずしいのが特徴です。 京阪神エリアの食材の供給源である淡路島。飛鳥・奈良時代には皇室や朝廷に食材を献上する“御食つ国(みけつくに)”であったことからもわかるように、昔からこの地は食の宝庫でした。 また、淡路島は古事記の冒頭に描かれる「国生み神話」にも登場しています。イザナギノミコトとイザナミノミコトの二柱の神様が混沌の大地を矛でかき回し、矛からこぼれた雫が固まり、“おのころ島”が誕生します。おのころ島で夫婦になったイザナギとイザナミは最初に蛭子神(ひるこ/えびす)と淡島を、続いて淡路島を、そして次々と国を生みました。 それから長い年月が経ったある日、蛭子神が漁師の百太夫の前に現れ、宮殿を建てるよう頼みます。百太夫はさっそく西宮大明神を建て、道薫坊(どうくんぼう)が蛭子神に仕えることに。けれど道薫坊が亡くなると、天候は荒れ、人々に災難が降りかかるように。そこで、百太夫が道薫坊そっくりの操り人形を作り、蛭子神に人形の舞いを見せたところ、ふたたび平穏が戻ってきました。この国生み神話ゆかりの「戒舞(えびすまい)」が、淡路人形浄瑠璃のはじまりとされています。