【山口県】ふるさと大牟田でカフェに変身! 光市立図書館から里帰りした路面電車
屋根やデッキ整備、駅前の観光拠点に
かつて光市立図書館の中庭に置かれて子どもたちの読書室になっていた西日本鉄道㈱の204型路面電車が、福岡県大牟田市に里帰りしてきょうで13年。今では大牟田駅西口で「古くて新しい」をモットーにしたカフェに生まれ変わり、観光拠点にもなっている。西鉄観光列車に乗って現地を訪問してみた。 (山上達也)
81年間、数奇な運命を歩んだ204号電車
204型電車は81年前の1943年に製造され、西鉄で大牟田線や福岡市内線を走った後、75年に廃車になった。 その後、西鉄の幹部と親しかった光市の松岡満寿男市長(当時)の要請で完成間もない光市立図書館の中庭で保存することになり、子どもたちの読書室として長く親しまれた。 電車が老朽化して解体の論議も出る中、2011年には大牟田市の市民団体「204号の会」がトレーラーによる運搬費を負担する形で電車を光市から引き取った。 電車は大牟田市内のうどん店の敷地で保存された後、西鉄が修理して18年に大牟田駅前に移設。19年には大牟田市に譲渡され、21年に「ハラ・ハーモニー・カフェ」として生まれ変わった。
車内で「日刊新周南」の記事を展示
電車は80人乗りで、長さ11.8メートル▽幅2.4メートル▽高さ4.1メートル▽重さ13.9トン。車体は現役時代のクリーム色とあずき色のツートンカラーに塗り変えた。 店内では大牟田市民に親しまれた喫茶店「コーヒーサロンはら」で提供されていたコーヒーやフルーツサンドを復刻販売。電車の周囲には屋根やデッキが整備され、おしゃれで落ち着いた空間を演出している。 西鉄大牟田駅と西鉄福岡駅を結ぶ観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の利用客の来店も多く、大牟田の新たな観光スポットや情報発信の拠点として脚光を浴びている。 店内は電車としての現役時代をしのばせる板張りの床や、吊り革がそのままになっている半面、喫茶店の営業に必要な電気や水道が引かれている。 これまでの204号電車の「生きざま」を紹介した新聞記事のファイルもあり、この中には「日刊新周南」の02年10月24日付と、19年5月9日付の記事が保存されている。 記者が西鉄観光列車で大牟田駅を訪れた3月16日、車内は親子連れやカップルでにぎわっていた。店員は「大牟田の顔である駅前の新たな観光拠点になった。かつて204号電車がお世話になった光市の皆さんも、ぜひお越しください。きっと204号も喜ぶでしょう」と話していた。 光市民に思い出の深い「204号電車」が大牟田市で立派に活躍している姿は、光市のまちづくりのあり方を探る上で貴重な参考材料になるだろう。