「咽頭結膜熱」「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」が流行中 過去10年間で最多の感染者数
咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?
編集部: 感染者数がこの10年で最も多くなっている咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とはどのような病気なのか教えてください。 中路先生: 咽頭結膜熱は小児の急性ウイルス性感染症で、数種の型のアデノウイルスが原因の病気です。咽頭結膜熱は通常夏期に地域全体で流行し、6月頃から徐々に増加し始め、7~8月にピークを形成する傾向があります。ただ、2003年から冬季にも流行のピークが明確にみられるようになっています。感染症発生動向調査での罹患年齢からは、5歳以下が約6割を占めています。感染経路は、手・指などを介した接触感染や飛沫感染、プールの水から結膜への直接侵入が考えられています。発熱、頭痛、食欲不振、咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血などの症状が出ます。咽頭結膜熱は対症療法が中心となり、特に目の症状が強い場合には、眼科での治療が必要なこともあります。 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌による感染症です。学童期の小児の感染が最も多くなっています。冬季、春から初夏にかけての2つのピークが認められている病気で、全体の報告数が増加傾向にあります。感染経路は、通常は患者との接触を介して広がっていき、家庭や学校などでの集団感染も多くみられます。急性期の感染率については兄弟間が最も高く、25%との報告もあります。潜伏期は2~5日で、突然の発熱と全身の倦怠感、咽頭痛によって発症し、嘔吐を伴うケースもあります。治療にはペニシリン系薬剤などの薬が用いられます。
咽頭結膜熱などの感染状況への受け止めは?
編集部: 咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染が増加している状況についての受け止めを教えてください。 中路先生: 今回の流行の背景には、やはり新型コロナウイルスの流行の影響があると考えられます。過去数年にわたり、これらの感染症に罹患していないため、免疫力が低下しており、よりかかりやすくなっていると考えられます。 新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは主に飛沫により感染しますが、咽頭結膜熱、溶連菌感染症はどちらも接触感染が主になります。そのため、手洗いをこまめにおこなうことが重要です。そして、子どもの場合は知らずに手を口にもっていくことが多いため、マスクの着用も有用でしょう。また、大人もかかることはあり得るので、子どもからの家庭内感染に注意する必要があります。症状が軽いと油断をして学校や会社に行くと、悪化して入院が必要になるケースの増加が想定されます。無理をせず休み、適切な感染対策を講じることが重要です。