【山口】世界シェア7割、日本が誇るグローバルニッチ 「カニカマ製造装置」老舗メーカー、起死回生の復活劇
おすしやサラダの具材として使われるカニ風味のかまぼこ「カニカマ」。いまやヘルシーフードとして日本だけでなく、世界中で人気の食品ですが、その製造装置で世界シェア7割を超えるのがヤナギヤ(山口県宇部市)です。創業100年を超える同社はニッチな分野で技術力を磨き、化粧品や医薬品など幅広い業界に装置を提供しています。 3代目の柳屋芳雄社長は「目の前にいるお客さまの『困った』を解決するのが我々の役目だ」という経営哲学を持っています。売り上げ規模を追わず、顧客の声に耳を傾けて装置を作り続ける。そんなスタイルを貫き続ける老舗企業の歴史と強さの背景を探ります。
【柳屋芳雄(やなぎや・よしお)】 1950年山口県生まれ、日本大学経済学部卒業後、兵庫県のかまぼこメーカーに就職。 1975年に24歳の若さでヤナギヤの3代目社長に就任。 1979年にカニカマ製造機を開発。 水産練り製品だけでなく、あらゆる食品や日用品、医薬品向けに装置の販路を広げる。
世界23カ国にカニカマ製造機を輸出
細い繊維が束ねられたスティック状の身をかじると、ホロッと崩れて口の中いっぱいにうまみが広がります。表面の鮮やかな赤味やプルプルとした弾力。ヤナギヤの装置で作られたカニカマは、食感も見た目も味わいも、カニの足の身そっくりです。 カニカマはインスタントラーメン、レトルトカレーなどと並んで、戦後日本の食品3大発明品として知られています。なかなかふだんは食べられない高級なカニの風味を気軽に楽しめる食材として、日本国内で年間6万トン程度、世界では60万~70万トンほど製造されています。
山口県の緑豊かな山々に囲まれた場所に、ヤナギヤの本社があります。3階建ての四角い本社ビルは一見、どこにでもありそうな中小企業のたたずまいです。しかし実際は、カニカマ製造装置でシェアトップを誇り、23カ国に輸出してきた世界的な企業です。2014年には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれました。 米国ではカルフォルニアロールの具材、タイではおでんや揚げ物、フランスでは老若男女のおやつ……カニカマは世界でいろいろな食べ方をされています。 「カニカマの製造装置といっても実際は何種類もあります。国や地域によって求められる味や食感が違うので、それぞれの顧客に合わせてオーダーメードで作っています」 同じような機械を大量生産することはせず、顧客のニーズにとことん寄り添ってものづくりをする。柳屋芳雄社長は経営者として、ずっとこの姿勢を貫いてきました。