松尾潔・Mrs.GREEN APPLEのMV公開停止に「我が事として考えて」
■タイトルや歌詞も改めるべきでは MV以前に、「コロンブス」を発想の端緒とし、曲のタイトルにまでしたこと、それ自体どうだったんだろう、という疑問が僕にはあります。コロンブスの侵略の対象とされているネイティブアメリカンのみならず、我々アジア系もそうですし、あとアフリカ系もそう。歴史教科書には「欧米の列強による植民地支配」という言葉がありますが、征服される側、支配される側の気持ちという、当事者意識が欠けていたんじゃないか、想像力も欠けていたんじゃないかなと思います。 それは、Mrs. GREEN APPLEや大森さんだけを責めるのではなくて、音楽業界、広告業界、メディア業界全体に言えることです。もっと言うと、我々が暮らしているこの日本全体に言えることかもしれませんが、MVがなくても、この楽曲自体を、コロンブス側の視点に立って聴いていたんじゃないかということです。 MVは公開停止になりましたが、歌詞の中には「コロンブスの高揚」という部分などが、今でも聴ける状態になっています。僕はこのMV騒動でこの曲を初めてじっくり聴きましたが、もう「楽しいだけのポップソング」として聴けない気持ちになっています。 僕は曲のタイトルも改める、歌詞も一部見直すところは見直して、出しなおすことが、彼らのアーティストとしてのバリューを高めることになるんじゃないかなとさえ考えています。 ■グローバル企業がなぜ問題意識を持たなかったのか もう一つの問題として、彼らが「ユニバーサルミュージック」という、世界有数の国際企業のレーベルの主力アーティストであるということ、また今回の曲が、コカ・コーラという誰もが知るグローバル企業のタイアップソングだったということが挙げられます。 そんな背景を持つ企業に従事する人たちが、ずっとノーチェックのまま、MVを作り上げるところまで、問題意識も持たずに黙認していたというのは、にわかに信じがたい話です。類人猿に人力車を引かせるというような、分かりやすく白人至上主義にも繋がるおそれのあるシーンは、国際的な視点があれば、炎上するという予測はできたはずです。これを奇貨として、考えを改めるしかないと思います。