京都発、環境に優しいおしゃれ…廃棄衣料の人工土で育てた綿花から洗える着物
廃棄衣料を再利用した人工の土で綿花を育て、糸を紡いで織る。そんなエコな方法で作られた着物が今秋、京都市下京区の着物販売店で発売された。衣類の大量生産・消費が社会問題化する中、かつて身近だった衣服の循環をよみがえらせようとの思いが込められている。(畝河内星麗) 【画像】試着会では色鮮やかな「咲心」の反物や着物が並んだ(京都市下京区で)
「着心地よく実用的」
着物の名は「咲心(えこ)」。環境負荷の軽減につながる着物として、着物の買い取り販売などを手がける「おちこちや京木棉(きょうもめん)」が開発した。木綿の着物は柔らかな手触りで、正絹よりも軽やか。値段は多くが10万円以下で、自宅で洗濯できる。 デザインにもこだわった。伝統的な絞り染めを施したものや、花や動物が手描き友禅で繊細に描かれたものなど多彩な商品が並ぶ。 9月下旬の試着会は着物ファンの関心を集めた。試着した50歳代の女性は「生地の成り立ちから着物の色合い、着心地まで環境や人に優しく、実用的。ぜひ手に入れたい」と笑顔だった。
企業、個人にも栽培呼びかけ
咲心を企画したのは店主のたなかきょうこさん(70)。「小豆3粒包める布は捨ててはいけない」。そう言って着物をほどいて仕立て直したり、布小物にリメイクしたりする祖母の姿を見て育った。「もったいない精神」が息づく着物に魅了された。 それでも、自身の店には汚すなどして廃棄せざるを得なくなった着物を残念そうに持ち込む客もいた。「うまく活用する方法はないか」。問題意識を抱いていたところ、8年ほど前、徳島市の会社が扱う廃棄衣料を原料にした土を見つけた。「これで綿花を栽培して着物を作れば、循環の輪になる」。そう思いつき、すぐに土を取り寄せ、店の屋上で綿花の栽培を始めた。
だが、プランター12鉢で1年に収穫できるのはわずか500グラムほど。着物1枚を作るのに必要な4キロの綿花を確保するには時間がかかる。そこで2016年から企業や個人に栽培の協力を呼びかける「京木棉プロジェクト」を始動した。今では約20組が参加し、収穫した綿花を店に送るなどしている。 少しずつ集まった綿花に古着などを綿に戻した 反毛はんもう を合わせ、今年、最初の生地が完成した。たなかさんの長年の夢が形になった。「挑戦は始まったばかり。循環が普及し、木綿の着物を日常使いしてもらえたらうれしい」と願う。 今後は受注生産で販売し、綿花栽培への協力も募る。問い合わせは同店(075・366・4884)。