<上海だより>武康路:春、新緑に包まれた最も美しい上海を愉しめる道
4月に入り、上海もようやく春を感じ始めました。2016年の1月には中心部で零下7.2度を記録し、1月下旬としては1981年以来の寒い冬を超えた上海にとっては、待ちに待った春です。
上海中心部の租界エリアではほぼ全ての道にプラタナスの並木道が続いていることはこれまでにも紹介しましたが、この季節には新緑がプラタナスの木をいっせいに彩り、上海全体が緑色に包まれ始めます。晴れた日にはこの並木道に木漏れ日が差し、見上げれば薄緑の若葉が陽光に照らされ柔らかな輝きを放っています。雨の日には春独特の初々しい草の香りが漂うなど、とにかくこの季節は車のクラクションや工事の音などで騒々しい上海に安らぎを与えてくれるのです。
そんな春を迎えた上海を愉しむのに最近人気が高いのは武康路です。元々海外の領事館が多く、孫文の妻である宋慶齢の旧居があるような敷居の高いエリアのため、穏やかな道ということで有名でしたが、近年はカフェやレストランなどが増え、上海人だけでなく外地からの観光客にも人気となり週末には多くの人で賑わう道となりました。
武康路は1907年に開通し100年以上の長い歴史を持つ道であり、租界時代には「Route Ferguson(福開森路)」と呼ばれていました。元々の「福が開く森の道」という何とも豊かな響きを持った中国語名の通り、今でもその雰囲気を味わうことができます。
その武康路で有名な建築が「武康大楼(I.S.S Normandy Apartments)です。上海のメインストリートである淮海路と興国路、天平路、余慶路、そして武康路の六叉路の中の、武康路と淮海路の間である約30度の角地に建てられた三角ビルということで有名です。建設は1924年で、上海の中で最も初期に建てられた居住用高層建築です。現在日系企業や店舗も多い徐家匯というエリアが90年代に開発されるまでは、この地域で最も高い建築だったそうです。なお、現在の価格は1平米あたり平均約9万元(約150万円)と、最高級物件の一つです。 武康路は元々政府関係者や作家などが多く住んでいたエリアのため、武康大樓だけでなく、大きな洋館が多いことでも有名です。カフェやレストランだけでなく、こうした歴史ある洋館の風景の中で撮影(中国らしく自撮りもとても多いです)を楽しむ人たちで賑わっています。個人的には数年前までの人が少なく閑静な武康路が好きでしたが、中国においても賑やかな繁華街だけでなくこのような文化的な道を楽しむ人たちが増えたことは、消費者市場の新たな傾向としても捉えつつ、移りゆく上海の文化としても楽しめればと思います。