どれがいいか迷っちゃう!「マッドマックス」最新作をIMAX、Dolby Atmos、ULTRA 4DXで鑑賞してみた
第88回アカデミー賞最多6部門を受賞した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)でデビューを果たした最強戦士、フュリオサにフィーチャーする『マッドマックス:フュリオサ』が5月31日(金)に公開される。前作でシャーリーズ・セロンが演じたフュリオサの怒りの“原点”が、アニャ・テイラー=ジョイとクリス・ヘムズワースの共演で新たに描きだされる。 【写真を見る】シャーリーズ・セロンからのバトンを受け継ぎ、アニャ・テイラー=ジョイが見せる凛としたフュリオサ! 世界崩壊から45年。平穏な“緑の地”からバイカー軍団に連れ去られ、故郷や家族、人生のすべてを奪われた若きフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)は、母を殺したディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)と、鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが土地の覇権を争う、狂気に満ちた世界と対峙することになる。 リアルで圧巻のノンストップ・カーアクションが世界中を席巻した「マッドマックス」シリーズ。最新作である本作は、まさにラージフォーマットで“体験すべき”1作だ。本稿では、「IMAX」「Dolby Atmos」「ULTRA 4DX」のそれぞれの楽しみ方をクロスレビューで紹介していく。 ■迫力ある映像を収めるならワイド画面がベストチョイス!IMAXでフュリオサの雄姿を堪能(映画ライター・神武団四郎) 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でアクションシーンを牽引し、世界の度肝を抜いた大隊長フュリオサ。彼女の生い立ちを描く今作は、15年にわたる怒濤の日々を綴った大河ドラマである。3日にわたってひたすら追走劇を繰り広げた前作とはまた違った展開が楽しめる。そんな本作でなにより特徴的なのが多彩なロケーション。フュリオサが育った自然豊かな“緑の地”から太陽が照りつける砂漠や砂丘、アスファルトの一本道がどこまでも続く「マッドマックス」名物ウェストランド。他にも岩山を削った砦(シタデル)やガソリンが湧き出るガスタウン、武器製造の拠点バレット・ファームと呼ばれる人工地帯など様々な舞台が登場する。そこで繰り広げられるのが、おなじみ個性あふれるカスタムカーによる肉弾戦のようなカーバトル。広がる大地と白い雲が浮かんだ青空を背に車やバイクが火花を散らし激突・大破していく様は怖いほどの迫力だが、開放的な風景が爽快感も与えてくれる。まさにIMAXシアター向きの作品だ。 IMAXといえば『デューン 砂の惑星PART2』(24)などに代表される1.43:1のスクエアに近いアスペクト比でおなじみだが、IMAXカメラを使わず撮影された本作は2.39:1、いわゆるシネマスコープのワイド画面。それってIMAXで観る意味あるの?と思う人がいるかもしれないが、視界いっぱい投影する体感的環境が基本のIMAXシアターは、目の前にスクリーンが広がっている感覚でアスペクト比に関わらず没入感が極めて高い。そもそも「マッドマックス」に限らずカーアクションの動線は平行が基本。迫力ある映像を収めるならワイド画面がベストチョイスになる。特に本作では目玉マシンはトレーラーを2台連結したウォー・タンク。列車のような巨大マシンが15分間にわたってカーバトルを繰り広げるが、真っ青な空を背に銀色に輝く巨体が「ドーン」と擬音を入れたくなるような迫力でシネスコスクリーンを埋め爆走する様は感動モノだ。ドラマパートにも力を入れた今作は、マシンのエンジン音や爆発など大音響のほか、緑の地で果樹を飛び交う蜂の羽音や会話シーンの背景でさらさらと音を立てる砂など繊細なサウンドデザインも聴きどころ。そんな音響面でも、ダイナミックレンジの広いIMAXシアターのアドバンテージは高い。マッドなマシンの大暴れや運命に抗うように生き抜くフュリオサの雄姿を堪能できるIMAXシアターをおすすめしたい。 ■森の音、荒々しい排気音、銃撃と爆破の破壊音…Dolby Atmosの没入感でマッドな物語をより強烈なものにする(映画ライター・相馬学) 2015年の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はアカデミー賞でこの年最多の6部門を制したが、そのうちの一つ、音響編集賞を受賞している点に注目。カーアクションの迫力を伝える点で、サウンドの緻密な構造は重要になってくるが、それが高く評価された格好だ。待望のシリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』もこの点に力を入れているのは言うまでもない。というわけで、リアルな迫力を体感させる音響システム、Dolby Atmos仕様のスクリーンで本作を体感したが、そのとんでもない臨場感に驚いた。 “緑の地”と呼ばれる森の音に囲まれた冒頭から一転、バイカー集団にさらわれた主人公フュリオサと、その母親の砂漠でのバイクチェイスでは荒々しい排気音が鳴り響く。風を切り、砂漠の砂を蹴る音。合間に飛びかう銃撃音。いずれの音も、どこからどこへ向かっているのかが、仮に映像を見ずともはっきりわかる。これは後に、スケールを増しながら展開するカーチェイスも同様。とりわけ、フュリオサらが乗り込んだ巨大タンカートレーラー通称“ウォー・タンク”と、略奪集団とのバトルが展開する中盤の見せ場は圧倒的で、車体下部のモーター音、複数の車両のエンジン音、空中からの襲撃音、銃撃と爆破の破壊音、さらにはウォー・タンク後方に備え付けられた複数の鉄球の回転音などに囲まれる。ハイテンションのバトルの渦中に放り込まれたような、そんな感覚を覚えずにいられない。 アクションを盛り立てる音以外にも、劇中では様々なサウンドが響く。例えば、迫りくる砂嵐の重低音。強風の中でかわされる会話。砂漠を歩くキャラクターの息遣い。そのような音が正しい位置に配置されることで、観客はフュリオサの復讐への道のりを体感していく。また本作には前作に続きジャンキーXLこと、トム・ホーケンボーグがスコアを提供しており、刺激的なデジタルミュージックも聴覚を大いに刺激する。Dolby Atmosの没入感は、マッドな物語をより強烈なものにするに違いない。 ■キャラクターたちの怒り、心情をより深く理解できるULTRA 4DX「とにかく1度体験してみて!」(映画ライター・タナカシノブ) 「ULTRA 4DX」で本作を鑑賞した感想は、とにかくすごい!ラージフォーマットでの映画体験は迫力満点で良質の音や画面を堪能でき、すでに好みのフォーマットが決まっている人も多いかもしれない。好みは人それぞれ、でもこの「ULTRA 4DX」は「とにかく1度体験してみて!」とおすすめしたくなるほど、衝撃&感激の映画体験を提供してくれる。2019年にグランドシネマサンシャイン池袋に初上陸し、今年4月から名称を改めた「ULTRA 4DX」特徴は、体験型シアター「4DXScreen」に「ULTRA」がプラスされた最高にプレミアムな映画体験の提供。圧倒的な没入感を味わえる視野270度の3面マルチプロジェクション上映システムとスペシャルエフェクトが加わり、ダイナミックな映画体験を可能にしている。 「ULTRA 4DX」と本作の相性の良さは驚くほどピッタリ。本作は、アニャ・テイラー=ジョイ演じるフュリオサがバイカー軍団に襲われるところから始まる物語で最強の戦士フュリオサの怒りの“原点”が描かれるのだが、その“始まり”となるバイクの音、エンジン音の臨場感たるや。観ている側にも心の底から怒りが湧き出てくるような感覚を地響きと共に体感できるのだ。座席が前後左右に揺れ、多様な特殊効果で五感を刺激してくる体験型シアターはこれまでも経験したが、風や水しぶき、熱までも映画の世界に没入しながら体感できたのは本作が初めて。「風が来た」「水が飛んできた」と素に戻ることなく、背中から感じた熱には思わず「熱っ!」と声を漏らし、キャラクターの心情に添いつつ、時にはキャラクターと同じ動きをしながら感じることができるのだ。 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に直結する物語が描かれる本作。フュリオサの怒りの原点、魂になにが起きていくのかを「ULTRA 4DX」で堪能すれば「マッドマックス」シリーズ、そしてキャラクターたちの怒り、心情をより深く理解できるはずだ。270度映しだされる映像は1度観ただけでは網羅するのは難しいだろう。複数回体験することで視点の違いを楽しみ、シリーズの繋がりやオマージュなども含めた小ネタなど新たな発見も期待できそうだ。「マッドマックス」シリーズらしい改造車のド迫力カーチェイスをライド感たっぷりに堪能しながら、荒れ果てた地でのものづくりの工夫や再利用など隅々までチェックして、ここで生きる人々の知恵や気持ちをより深く理解してみたい。 構成/編集部