病院や避難所など重要施設とつながる上下水道の耐震化率、わずか15%…財政支援強化へ
全国の病院や避難所など約2万5000の重要施設のうち、接続する上下水道管がいずれも耐震化されている施設は15%にとどまることが、1月の能登半島地震を受けた国土交通省の緊急点検でわかった。同省が1日発表した。上下水道事業を担う自治体などの財政逼迫(ひっぱく)で耐震化が進んでいないのが要因で、同省は財政支援などを強化し、重要施設を優先して耐震管への置き換えなどを進めるよう促す。
能登半島地震では、上下水道の施設や管路が被災し、石川など6県で最大計約14万戸が断水した。奥能登地方では、浄水場や主要な管路で、耐震化されていない箇所が損傷し、断水が長期化。おおむね解消するまで5か月を要した。
緊急点検は、能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市、輪島市など6市町を除く全国約5300の上下水道事業者を対象に実施。災害時に拠点となる重要施設(災害拠点病院、避難所、警察署、消防署、県庁、市役所など)の耐震状況(3月時点)を調べた。
その結果、重要施設2万4974か所のうち、耐震化された上下水道管と接続している施設は3649か所(15%)にとどまった。都道府県別では東京都が52%で最も高く、その他は30%以下だった。
国交省によると、上下水道用の耐震管は阪神大震災(1995年)以降、普及しつつあるが、「財政負担が重く、人手や時間も必要なため、置き換えが進んでいない」としている。
一方、被災すると断水が長期化する恐れがある上下水道施設の耐震化率も、取水施設46%、浄水施設43%、下水処理場48%と低水準だった。
国交省は、全国の事業者に対し、来年1月末までに上下水道の耐震化計画を策定するよう求めている。来年度予算の概算要求に、避難所や病院につながる上下水道の一体的な耐震化事業への交付金約60億円などを盛り込んでおり、財政面、技術面での支援を強化する方針。
斉藤国交相は1日の閣議後記者会見で、「地域の取り組みをしっかりと支援しつつ、耐震化の取り組みを毎年点検して計画的、集中的に進め、強靱(きょうじん)で持続可能な上下水道システムの構築を図りたい」と述べた。