照強が断髪式 照ノ富士に抱き締められ号泣 第2の人生は東京と故郷淡路島行き来しながら新事業
大相撲の元幕内照強で、3月の春場所限りで引退した福岡翔輝さん(29)が23日、東京・両国国技館で断髪式を行った。約300人がはさみを入れ、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の止めばさみで、まげに別れを告げた。断髪式終盤、幕下以下の若い衆だったころに、付け人を務めていた兄弟子の前頭宝富士がはさみを入れた際に「お疲れさま。付け人についてくれて、ありがとう」と、声をかけられてから、涙腺が崩壊した。何とかあふれそうな涙をこらえていたが、切磋琢磨(せっさたくま)してきた横綱照ノ富士から、はさみを入れた後に抱き締められると、涙を止められずに号泣した。 【写真】大銀杏を切り落とされ、涙をぬぐう照強 「泣かないと決めていたんですけど、やっぱり、感極まって…。昨日、白鵬横綱(宮城野親方)には『泣かないと思います』と言っていた。でも(宮城野親方に)『一緒に戦っていた人、一緒に稽古していた人が(はさみを入れに)来ると、だんだんフラッシュバックして、感極まってくるんだよ』と言われていて、たしかにそうだなと思った」と、整髪中に照れ笑いを浮かべながら話した。大銀杏(おおいちょう)が切り落とされた瞬間については「体の一部が、はがされている感じがした。でも、取れた瞬間に頭がめっちゃ軽くなった」と、さみしさと同時に、10年春場所で初土俵を踏んで以来、短髪とは無縁の生活だっただけに、違和感も覚えた様子だ。 照強は身長169センチ、体重110キロ余りの小兵ながら、大柄な相手にも真っ向勝負で勝つ力強さと、足取りなど巧みな技を駆使する取り口を兼ね備え、豪快な塩まきなどでも人気だった。また、阪神・淡路大震災が起きた95年1月17日に、震源地に近い兵庫県の淡路島で生まれたことでも話題となった。今後は「楽しみにしていてください。おもろいことをやろうと思っているので」と、詳細は明かさなかったが、東京と淡路島を行き来しながら、事業を展開する第2の人生を計画しているという。 サイドを大胆に刈り上げた新ヘアースタイルへの整髪中には、照ノ富士も現れ「スッキリした? 頭の形きれいだな。ちょんまげよりも似合ってるんじゃない?」と、冗談めかしながら声を懸けられた。照ノ富士は「顔色も(引退してから)良くなっているから、相当無理していたんだろうなと分かる」と、労をねぎらっていた。糖尿病を患い、力が入らなくなったことが、引退の大きな理由。ただ、現在の体調は「だいぶいいですよ」と良好で、体重は100キロ余りだという。 整髪後は、スーツ姿で再び土俵に上がった。伊勢ケ浜親方から「小さいながらも頑張って『小よく大を制す』を体現した力士でした。照強というしこ名は、地元淡路の人を勇気づけるため、明るく照らすように頑張ってほしいと思って付けました。感謝の気持ちを忘れずに、世の中の人を明るく照らす人間として歩んでいってくれると思います」と、エールを送られた。 スーツ姿の照強は「皆さまに支えられたからこそ、14年間、頑張ることができました。相撲界での思い出はたくさんありますが(20年7月場所で返り入幕の)照ノ富士関の援護射撃をし(優勝を争っていた当時)大関朝乃山関に(14日目に足取りで)勝ったことが、自分の中で1番の思い出です。その際、照ノ富士関から『お前のおかげで優勝できた。ありがとう』。その言葉が、自分の中での宝物であり、誇りです。第2の人生では、相撲界で学んだことを生かし、もう1度、花を咲かせられるように頑張りますので、これからも皆さん、応援をよろしくお願いします。本日は本当に、ありがとうございました」とあいさつし、盛大な拍手を浴びながら師弟そろって頭を下げていた。【高田文太】