個人株主新時代 「個人の“ファン株主”こそ安定株主」 伊井哲朗コモンズ投信社長インタビュー
── 直接、消費者と接点のないB2B企業はどうすればよいか? ■自分たちの商品・サービスを個人にアピールするのはなかなか難しいが、それでも、各社、いろいろな工夫をしている。建機大手のコマツは、能登半島地震から日が浅い3月に石川県の工場で、当社ファンドの受益者を対象とした親子見学会を実施した。重機が好きな子供が多く、みんな大喜びだった。 農機具のクボタも北海道の施設で、当社の受益者を対象に、親子で農業を学べるイベントを実施した。B2B企業でも個人のファンを作ることは可能だ。 ── 個人は同時にファンにもなるべきと。 ■自分が共感する企業を見つけ、いわゆる「推し活」ができるようになるとよい。マーケットに大きな振幅があっても、自分が共感できる会社なら持ちこたえられるし、株式を買い増そうということにもなる。 また、新NISAは損益通算ができず、利益が出ないと意味がない制度だ。利益を出すには、長期の積み立てが有効だが、長期で積み立てるためには、企業に共感する必要がある。 ── 投資信託も同じでは。 ■当社も受益者から、「コモンズの理念に共感しているのでなかなか売れない」と言われる。当社の受益者の7割は積み立てで購入している。15年間運用しているが、どのタイミングで買っても、5年以上積み立てていれば、損益はプラスだ。 当社のようなアクティブファンドは、リターン以外にも大きな学びがある。例えば、先ほどの見学会のように、日本の企業の活躍を親子で体験することができる。これを我々は「社会的リターン」と呼んでいるが、その大切さを感じ取る人たちが増えていることを実感している。 (伊井哲朗・コモンズ投信社長) ■人物略歴 いい・てつろう 1960年愛知県出身。84年山一証券入社。メリルリンチ日本証券などを経て、2007年コモンズ投信創業とともに現職。12年から最高運用責任者(CIO)を兼務。23年6月投資信託協会理事に就任。