個人株主新時代 「個人の“ファン株主”こそ安定株主」 伊井哲朗コモンズ投信社長インタビュー
── 具体的には。 ■海外のアクティビストは、「自社株買いをしなさい」「ファンドから経営者を受け入れなさい」などとガンガンと要求する。彼らの主張は表面的には正論が多いので、経営陣は彼らの提案を全く無視するというわけにはいかない。 しかし、彼らは結果的には短期で株式を売り抜けるので、安定株主にはなりにくい。企業側からするとアクティビストに株主にはなってもらいたくないというのが本音だ。 ── 流通株式数を重視する東証の市場改革もあり、今更、持ち合いには戻れない。 ■そこで今、企業は個人に長期で株式を保有してもらいたいと考えている。新NISAに対応するため、この2~3年、企業の株式分割がすごく増えている。これは、東証が企業に投資単位を50万円以下に引き下げるように要請したこともあるが、アクティビストの影響も大きい。 NTTなどは25分割し、今では1万5000円台から買えるし、トヨタ自動車などの日本を代表する企業も分割を実施した。企業の個人重視はこの動きからも分かる。 ── 株主優待を充実させる動きも出ている。 ■機関投資家にはメリットがないとして、以前は廃止する流れだったが、ここ1~2年は逆に復活している。 例えば、アクティビストのバリューアクト・キャピタルが株主に入っているセブン&アイ・ホールディングスは、アクティビストに対抗するため個人に株主になってもらおうと、株主優待の復活を言い始めている。企業が株主構成を考え直す中で、個人を重視するトレンドは今後、ますます強まるだろう。 ◇「ファン株主」を作る ── それだけで、個人が安定株主になるのか。 ■投資単位の引き下げや株主優待で、個人がどんどん買ってくれるかというと、そんなに簡単ではない。私が企業に話しているのは、いかに「ファン株主」を作るかということだ。ファンになれば、この会社を応援しようと長期で株式を保有してくれる。 例えば、食品大手のカゴメ。「当社の商品を買ってくれる人には、株主になってほしい」と、統合報告書も明らかに個人を意識した形になっている。