<解説>いよいよ最新作公開! 劇場版「名探偵コナン」の今
その後、「純黒」翌年の「から紅の恋歌(ラブレター)」や、“安室を100億円の男に”と盛り上がった「ゼロの執行人」翌年の「紺青の拳(こんじょうのフィスト)」、スピンオフにもなった安室の警察学校時代の仲間が描かれた「ハロウィンの花嫁」翌年の「黒鉄の魚影」でも、変わらず興行収入は伸びてきました。このことからも、近年の盛り上がりは2016年以降の新たな盛り上がり“だけ”が要因ではなく、そもそもの「名探偵コナン」が持つ作品力あってのものであることがよく分かります。「純黒」以降の盛り上がりは、そうした元からの作品力に加えて、元来“卒業する人が少ない”と言われていた「名探偵コナン」にあっても、卒業して作品から離れていた人達を再び誘い、劇場版を追うファンをより拡大することで盛り上がりの後押しとなったのでしょう。
そこから大台100億円突破を達成するまでに、本作の盛り上がりを更に拡大した要素としては、本作を含めた劇場版アニメ全体のブームも大きいと思われます。特に2020年の劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」以降、ご存知の通り、従来は数年に1作程度であった劇場版アニメの興収100億円突破が史上類をみないほど頻発してきました。
こうした背景としては、コロナ禍での自粛からの揺り戻しや、ヒット作の頻発により映画館へ足を運ぶ頻度が増えたということが大きいですが、他にもアニメファンの間で定着してきた映画の複数回鑑賞の習慣が、来場者特典なども手伝ってコアなアニメファン以外にまで広がり定着していったこともあるのでしょう。そうして、良いと思った作品を何度も映画館で鑑賞することのハードルが下がり、さらに話題作を鑑賞する中で予告を目にする機会も増えてくることもまた、近年の“劇コナ”のメガヒットの大きな後押しとなっていたのだと思います。
上記の盛り上がりを受けて、今年は異例の試写会なしでの公開や、公開日をXデーとした“キッドが日本中のあらゆるものをジャックしていくプロジェクト”が企画されるなど、作品公式側の動きに年々力が入ってきているのもポイントです。そもそも宣伝に力を入れるのは当たり前ではありますが、毎年の恒例作品でありながらマンネリ化せず、常に新鮮な仕掛けを打ってくれるのは、年々高まる観客の期待や熱量を公開前からより一層高めてもくれます。