これじゃ保険料、いくら払っても足りないよ…製薬企業「高すぎるクスリ」「イマイチな新薬」でボロ儲けのエグい戦略
こんな国は日本だけ
製薬会社のパワーを物語るこんな事件もあった。2005年に脂質異常症薬のクレストールが承認された際に、製造販売するアストラゼネカ社が「実力行使」に出たのだ。 「海外にもあるクスリの薬価を算定するときには、海外の価格に近づけるために『外国平均価格調整』という制度が適用されることがあります。 当初、クレストールは2.5mg、5mg、10mgの錠剤で発売される予定でしたが、'05年の中医協で外国平均価格調整が適用され、『5mg錠は169.8円、10mg錠は308.7円』と決まりました。これにアストラゼネカは『値段が安すぎる』と不満を抱き、10mg錠の発売をとりやめたのです。 脂質異常症薬は1日最大10mgを処方するのが一般的。つまりクレストールを処方するときは5mg錠を2つ出さなければならなくなったわけです」(前出・製薬業界関係者) あの手この手で製薬会社は制度の穴を見つけて、1円でも多く儲けるために策を弄する。大きく報じられることは決してないが、これが医薬品業界の実態なのである。 日本のクスリを取り巻く制度は、世界でも異例だ。公的保険の手薄なアメリカでは、カゼ薬や胃薬、湿布薬といった「命にかかわらないクスリ」を医師が大量に処方すること自体がない。またイギリスやフランスでは、原則としてすべてのクスリが費用対効果を厳しく評価され、採算のあわないものは最初から承認されなかったり、承認を取り消されたりする。 ところが日本では、新しく開発されたクスリが「どんなに高かろうと承認され保険適用となる」のだから、カネがいくらあっても足りるはずがない。薬価の問題に詳しい、日本総研主任研究員の成瀬道紀氏が指摘する。 「病院・診療所の外来診療で処方される薬剤費の対GDP比は、日本は先進国のなかでトップクラスです。その背景には、承認された新薬が費用対効果を吟味することなく原則保険収載されていること、患者の外来受診回数が多いことなどがあります。 費用対効果に劣るものも含めて、ほぼすべてのクスリを保険でまかなう現在のしくみでは、薬剤費をコントロールすることは困難です。 韓国では、かつては日本と同じく承認されたクスリが原則すべて保険適用となり、財政を圧迫していましたが、2007年から費用対効果の評価を厳しくし、処方のガイドラインや推薦医薬品リストを国が定めるようにして効果を上げています。 日本も韓国のように、クスリの費用対効果をきちんと評価するしくみを導入するのが望ましいでしょう」 製薬会社栄えて国滅ぶ。日本は今、その瀬戸際にいるのかもしれない。 「週刊現代」2024年6月29日・7月6日号より
週刊現代(講談社)