横浜DeNAのセ下克上を支えたスカウト流儀とは?「巨人名投手の残像」
特に左投手の見極め方にも吉田氏独自の物差しがある。 「左で重要なのはこれを持っている選手ですよ」 そう言ってカーブ、スライダーを投げるフォームをジェスチャーで示した。 ストレートと縦の鋭い変化があれば、プロで通用するためのピッチングの組み立ての基本に対応できる。カーブ、スライダーのキレるピッチャーは腕が振れ、投げっぷりがいい証拠でもある。そしてストレートとカーブの2種類をすでに持っている投手は、プロで進化する可能性を秘めているというのだ。 「高橋一三がそうだった。真っ直ぐとカーブしかなかったが、そういう投手はノビシロがある。プロで壁にぶちあたると、フォークを覚えて20勝し、次にシュートを覚えてまた20勝した。左投手は、シュート、チェンジアップを覚えることで、プロで一皮むける。濱口がそうだよね。大学では、そう投げていなかったチェンジアップをプロで覚えた。ただ、こういう種類のボールをひとつ覚えるとスピードが落ちる。148キロを投げていた投手が、ボールがいかなくなる。腕が緩むんだね。でも、そこを克服して、またスピードを上げてくると、コントロールもつき、一流になれる。堀内も、新浦もそうだった。それがセンスなんだ。だから僕はセンスの有無を大事にしている。進化できるかどうかの部分だな」 吉田氏が、見極めの条件に馬力、球速にプラスしてセンスを付け加えているのは、こういう理由なのだ。ドラフトの成否は、選手自身のプロでの進化が鍵を握っているのである。 「今永、濱口、石田は、この2、3年で、本物のコントロールをつけることができるか、どうか。そこが勝負。モノに出来れば、10年、この世界で食っていける」 吉田氏は、左腕トリオをそういう目で見守っている。(以下明日掲載の下に続く) (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)