スタッフ10人で作り上げた良質の喜劇『侍タイムスリッパー』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。 【水先案内人 高松啓二のおススメ】 またタイムスリップものかと思いきや本作は、ちょいとヒネリの効いたコメディである。幕末、会津藩士の高坂新左衛門は、長州藩士暗殺の密命を受ける。相手が現れたところで剣を抜くと雷が落ちて現代の京都時代劇撮影所へタイムスリップしてしまう。 タイムスリップものは、主人公が元の時代に戻ろうとするが、本作は現代でサバイバルしていく。ひょんなことで新左衛門は時代劇の斬られ役で食っていくことにするが、本人は本物の侍なのに映画用に鍛錬していくのが可笑しい。 新左衛門役・山口馬木也の、無骨な顔の古参侍で四苦八苦しながら時代になじもうとする姿が悲哀あるユーモアを生み、愛すべき作品になっている。安田淳一監督が脚本、撮影、照明、編集までひとりでこなし、スタッフも10人の自主映画レベルだが、そんな苦労は微塵も感じさせない良質の喜劇に仕上がっている。なんでも監督は初号完成時、貯金7000円だったとか。「武士は食わねど高楊枝」映画だね。 <作品情報> 『侍タイムスリッパー』 8月17日(金) 公開