世間体を気にした? 鹿児島県警が異例の公表、警察官延べ38人を処分…でも会見は拒否
鹿児島県警は31日、2020~22年に認知した詐欺と強制性交の計3事件について、被害者への相談対応や事件処理が不適切だったとして、警察官延べ38人を処分した。監察課は「本来は発表すべきものではないが、事案の内容に対する県民の関心も高く、例外的に公表した」としている。 【写真】鹿児島県警の不適切な事件処理に伴う処分者を一覧で見る
現場で対応に当たるなど行為責任を負う21人と、それに伴う監督責任で17人が処分された。最も重い処分は所属長訓戒で、いずれも懲戒処分ではない。 20年3月、鹿児島中央署は詐欺被害を訴える女性の被害届を受理せず、逮捕までに3年9カ月要した。同課は、丁寧さを欠き事件管理も不十分だったとして、同署刑事2課長の50代警部など延べ22人を処分した。 別の県内の50代女性も22年6月に詐欺被害を訴えたが、鹿児島南署が不受理にした。対応した男性警察官は犯罪の構成要件に当たらないと判断。「苦情・相談等事案処理票」を虚偽の内容で作成した。県警は今年8月、虚偽公文書作成の疑いで男性警察官を書類送検。副署長を業務指導とするなど6人を処分した。 女性は23年4月、不受理は不適切だと県警本部に申し立てたが、「総務課が本部長への報告を失念した」ため、課長の60代男性警視ら5人も処分された。 新型コロナウイルス宿泊療養施設で県医師会元職員の男性が強制性交容疑で書類送検された事件(不起訴処分)も対象となった。
女性が22年1月に鹿児島中央署に出した告訴状について、同署刑事1課の職員が受理対象となるか検討せず、規定に沿った対応をしなかったとして、同課長代理の40代警部補ら5人が所属長注意などを受けた。 牛垣誠首席監察官は「深くおわびする。信頼回復に向けて、再発防止策に着実に取り組む」と述べた。 ◇ 鹿児島県警は31日、不適切な事件処理をした捜査幹部や担当者の処分結果について、異例の公表に踏み切った。一方で、被害を訴えても受け渋りにあった当事者らは「これだけ多くの警察官がかかわりながら判断を誤ったことに不信感がある。処分したとの連絡もない」と憤った。 県警の不祥事の公表判断は「警察庁の懲戒処分の発表指針」が大きな根拠となっている。今回のような訓戒以下の処分はそもそも対象外で、詳しい内容を公表していない事案も少なくない。県警への情報公開請求によると、今年1~9月の処分者は、懲戒4人、訓戒12人、注意27人だった。
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