【高校サッカー選手権】浦和学院、武南との持久戦を制して2年ぶりの4強入り
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選は11月3日、浦和駒場スタジアムで準々決勝の残り2試合が行われ、浦和学院が武南との持久戦を1-0で制し、11月10日の準決勝(NACK5スタジアム)で西武台と対戦することになった。浦和学院のベスト4進出は2年ぶり6度目となる。武南は2年連続30度目の4強を逃した。 【フォトギャラリー】浦和学院 vs 武南 インターハイ(総体)予選ベスト4で、初優勝を目指す浦和学院は3バックがスキのない守備を継続し、相手にボールを握られながらもCB上村龍生(3年)を中心に最後の局面では決定的な仕事をさせなかった。 昨年、新人大会に続き関東高校大会、総体の両予選を制し3冠を獲得した武南は、畑乙樹(3年)や有川達琉(2年)のMF陣がパスとドリブルで攻撃を組み立て、1トップの大熊來瑠(3年)がゴールに迫った。 浦和学院は前半9分、1年生からレギュラーのMF坂間真翔(3年)の蹴った左CKをGKがパンチングし、MF二階堂拓人(3年)がこぼれ球を拾ってシュート。10分には右ウイングバック小柳快颯(3年)が、FW佐藤大心(3年)の左クロスを頭で狙い、27分にも佐藤の左クロスから1トップの橋本秀太(3年)が決定的なヘディングシュートを放ったが、GKに捕球された。 武南は大熊、畑、アンカーの佐藤颯(3年)らが積極的にシュートを狙ったが、浦和学院の堅守を崩し切る展開には、なかなか持ち込めなかった。 一進一退の攻防を展開した前半は0-0で終了。 後半に入ると外から中央に切れ込む攻めが多くなった武南が、敵陣に頻繁に進入するようになった。こぼれ球を拾ったMF小山一絆(1年)が1分、決定的なシュートを打ったがGK岡本悠汰(3年)がビッグセーブ。10分には大熊が正面から放ったものの威力がなく、19分の左ウイングバック田中理月(2年)の一撃も決定的だったが、枠を捕らえることはできなかった。 耐えてしのぐ時間がやや長くなっていた浦和学院だが、守備でのいいリズムが決勝点を生んだ。29分、佐藤がスピードに乗ったドリブルで左サイドを突破。鋭いグラウンダーのクロスを上げるとMF平昭一哉(2年)がスルーし、遠いサイドに詰めていたFW市川輝(2年)が確実に蹴り込んだ。 市川は初戦の2回戦でベンチ入りしたが出番はなく、3回戦はベンチ外だった。しかし3回戦後の練習で状態が良く、この日は再びメンバーに入り、後半21分から登場。「呼ばれた瞬間、自分がゴールを決めて決着をつけてやろうと思いました。佐藤さんのクロスを信じてゴール前に飛び込みました。めちゃくちゃうれしかった」と今大会初出場でチームを4強に導く決勝点を挙げ、舌も滑らかだった。 後半のシュートはこの1本だけだが、武南の攻撃を忠実な応対と高い集中力で防御。就任1年目で総体と選手権の両予選で準決勝に進んだ川上耕平監督は、「歴史上、駒場で武南に勝つのは難しいと思ったが、相手のやりたいことを防げた。耐える時間は長かったが、本当によくやってくれました」と喜びを抑えきれない様子だった。 過去、関東高校大会と高校総体の出場経験はあるが、選手権は予選での準優勝が1度あるだけだ。川上監督は3回戦で延長勝ちした時も、8強で満足そうな言葉を発し、この日も準決勝の抱負を聞かれると「いやあ、もう、これで」と笑うばかり。腹の中は分からないが、欲を見せることはなかった。 2年前は上田海輝人、石川真稀という強力2トップを擁して4強入り。今回は突出した選手は不在だが、1年生からレギュラーで主将のMF平瀬優真(3年)は否定する。「あの先輩のような派手さはないが、技術やパスやドリブルなどで違いを見せられる仲間たちばかり。全員が突出しています」と胸を張り、「今度こそこの大会で結果を出したいと思う」と初優勝への意気込みを示す。監督がいくらとぼけてみても、選手はその気でいる。 (写真・文=河野正)