水谷八重子・波乃久里子・渡辺えりの「三婆」、襲名30周年控える八重子は「初舞台から気持ち変わらず」
2月に東京・新橋演舞場、京都・南座で上演される「二月新派喜劇公演『三婆』」の記者懇談会が、本日12月17日に東京都内で行われた。 【画像】水谷八重子(他7件) 「三婆」は、有吉佐和子が1961年に発表した小説をもとに、1973年に小幡欣治の脚本で初演された作品。以降、上演が重ねられ、今回は松竹創業130周年、新橋演舞場100周年を冠して公演が打たれる。劇中では、昭和38年の初夏、武市浩蔵が愛人・駒代(水谷八重子)宅の風呂場で急死したことをきっかけに、駒代、本妻の松子(波乃久里子)、浩蔵の妹・タキ(渡辺えり)が奇妙な共同生活を送る様が描かれる。 記者懇談会には八重子、久里子、渡辺が登壇。八重子と久里子は2005年より、渡辺は2016年より「三婆」に出演しており、3人は昨年6月の公演で共演した。八重子は、新橋演舞場について「初舞台を踏んだ劇場です。ここのところ、(新橋)演舞場が遠く感じられていたので、ドキリとしている今でございます」と心境を語り、京都・南座についても「芝居のことが考えられないくらい懐かしい、京都という街に行けることに思いがいっぱいでございます。胸ばかりいっぱいじゃ仕方がない。まずはお客様が(客席に)いっぱいじゃないと(笑)」と語る。 また久里子は、「大好きな演舞場、大好きな南座で初仕事ができること幸せでございます」とコメントし、渡辺は、八重子と久里子に視線を送り、「(前回公演では)稽古場からずっと笑わせていただきました。舞台の上では家族や同士のようなコンビネーションのお二人に、私は憧れています。お二人のもとで新人のような気持ちで臨めることがうれしく、まるで神様から与えられた修行の場所のよう。お二人の芸は盗み切れないものですが、(前回公演を経て)盗みつつあるので、今度こそ(笑)」と喜びをにじませた。 2025年12月で80歳を迎える久里子は、役の設定よりも若い頃から松子を演じてきた。「今はずっと歳を取っちゃった。想像していた役の気持ちが、今では人間的なものも含め、わかってきたような気がします。人生はお金じゃない、四角かった人間性が丸くなっていくんです。『三婆』は喜劇と言えど怖い作品で、人間の弱さや1人では生きていけないということを描いています。このような作品を残してくださった有吉先生に感謝いたします」と述べる。また八重子は、「考えてみると、大詰めのヨボヨボになったところだけが芝居のような気がします。大詰めだけは思い切り遊び、自分がヨボヨボになった姿を想像して楽しんでやろうと思います」と語った。 戯曲が古くならないことに驚かされたという渡辺は、本作の好きなところを「男女の格差がなくなり、女性の社会進出が進むだろうと思っていたけど、なかなかならない。そのことを逆手に取っているのが良いんです。世知辛い世の中でも、夢を忘れてはいけないと思わされますし、夢はもちろん、友情が大事なんだと訴えかけているところが大好きです」と説明した。 また、1995年に二代目水谷八重子を襲名した八重子にとって、2025年は襲名30周年となる。心境を聞かれた八重子は「それによって、やるぞ!という気持ちにはならないですし、駒代として生きていくだけだと思っております。自分ではない自分になることが(芝居を通しての)私たちの一番の楽しみであり、なり切れたときに一番の喜びがある。また、その姿を観たお客様が反応し、その人間を認めてくださるのが生きがいです。その気持ちは何年経っても変わらないと思います。初舞台のときに、そのように母に教わったような気がします」と振り返った。 公演は2月1日から9日まで新橋演舞場、13日から24日まで南座で行われる。演出を齋藤雅文が手がけ、少年忍者の川﨑皇輝、劇団新派の田口守、鴫原桂、大野梨栄らが出演する。 ■ 二月新派喜劇公演「三婆」 2025年2月1日(土)~9日(日) 東京都 新橋演舞場 2025年2月13日(木)~24日(月・振休) 京都府 南座 □ スタッフ 原作:有吉佐和子 脚本:小幡欣治 演出:齋藤雅文 □ 出演 水谷八重子 / 波乃久里子 / 渡辺えり / 川崎皇輝 / 大野梨栄 / 鴫原桂 / 田口守