AIをコントロールするために、暗号資産から学べること(あるいは暗号資産業界ができること)
アメリカのIT業界の大物たちは、批判者たちから利己的なテクノ・ユートピアニスト(夢想主義者)と呼ばれる存在から、反ユートピア的なストーリーを最も声高に叫ぶ人たちへと急速に変身した。 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、オープンAI(OpenAI)のCEOサム・アルトマン氏、元グーグルのコンピュータサイエンティストで「AIのゴッドファーザー」とも呼ばれるジェフリー・ヒントン氏をはじめとする350人以上が署名した公開書簡は、「AIによる人類滅亡のリスクを軽減することは、パンデミックや核戦争など他の社会的規模のリスクと並ぶ世界の優先課題とすべきである」という一文からなる宣言だった。 またテスラのイーロン・マスクCEOを含む3万1800人が署名した公開書簡が、AIが人類にもたらす脅威を社会が見極めるまで、6カ月間のAI開発中断を求めたことも記憶に新しい。汎用人工知能(AGI)分野の生みの親とされるエリエゼル・ユドコウスキー(Eliezer Yudkowsky)氏は、タイム誌のコラムで、書簡は十分ではないため署名しなかったと語った。その代わりに同氏は、人類を滅ぼすような意識を持ったデジタル存在が誕生しないよう、AI開発を軍の力を使ってでも停止させることを呼びかけた。 世界のリーダーたちが、これら著名な専門家たちの懸念を無視することは難しいだろう。人間の存続が脅かされる可能性が確かにあることは広く理解されるようになっている。問題は、そのリスクをどのように軽減させるかだ。 AIの行き過ぎを防ぐ社会の取り組みにおいて、私は、暗号資産業界が果たせる役割があると考えている。ブロックチェーンはデータインプットの由来や、ディープフェイクなどの偽情報を防ぐ証拠に関して有用であり、企業によるものではなく、共同的な所有権を実現することもできる。しかしこれらを脇に置いて、暗号資産コミュニティに可能な最も価値ある貢献は、その「分散化マインドセット」にあると思う。パワフルなテクノロジーの所有が集中することで生じる危険について、独自の視点を与える考え方だ。