G2P-Japan欧州ツアー2023~パリ、ロッテルダム、プラハ(中編)【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
■2023年6月、プラハ その翌日にわれわれは、オランダ・アムステルダムのスキポール空港から、チェコのヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ空港に飛んだ。チェコもプラハも初訪問である。 プラハのホストは、カレル大学のイリ・ザフラドニク(Jiri Zahradnik)。イリもやはり、ロッテルダムのハーグマンス教授と同様、それまで面識がなく、初対面である。しかし実はイリは、これまでのG2P-Japanの研究を一緒に進めてきた共同研究者である。 イリは元々、イスラエル・レホボトにあるワイツマン研究所に所属する博士研究員だった。イリの当時のボスであるギデオン・シュライバー(Gideon Schreiber)教授とは、京都でエイズウイルスの研究をしているときに知り合った。「知り合った」と言っても、その当時はやはり面識はなく、実験に必要な試薬をメールでリクエストして、その提供を受け、それを使って実験し、一緒に論文を発表した、というだけの間柄だった。しかし、その論文を発表した後の2017年に、私はギデオンに会うために、そして将来の国際共同研究の可能性を模索するために、イスラエルを訪問していた。 そして2021年。新型コロナパンデミックの中、ギデオンも新型コロナの研究を進めていることを、論文を読んで知る。その論文で知った実験技術は、まさに当時、われわれG2P-Japanが必要としているものだった。私はすぐにギデオンにメールを送り、協力を仰いだ。 過去のエイズウイルスについての共同研究の縁、そしてなにより、私がイスラエルに訪問していたこともあって、新型コロナについても、とても有意義な共同研究を展開することができた。イスラエルで直接会った縁がなかったら、この共同研究は進まなかっただろうと思う。 ちなみにギデオンとは、第15話で紹介した、2022年に南アフリカで開催されたワークショップで再会を果たすことができた。 話をすこし戻して。新型コロナ変異株についてのG2P-Japanのスクランブル研究を進める中で、ギデオンとの国際共同研究も展開された。そして、ギデオンの研究室での実働部隊こそが、ギデオンの研究室の博士研究員のイリだった、というわけである。イリはその後、2023年に母国チェコで職を得て、自分の研究室を運営し始めていた。 そういう経緯もあって、われわれの欧州ツアーの機に彼の元を訪問し、これまでのお互いの労をねぎらうと共に、これからの共同研究について議論する機会を設けようと思った訳である。イリとの国際共同研究は、彼がプラハに異動した後もスムーズに進んでいて、いつしかG2P-Japanの論文には欠かせない実験を担う重要なパートナーとなっている。 しかし上述のとおり、これまでのやりとりはすべてメールで、ウェブチャットすらしたことがなかったのであった。そんな彼と、プラハの空港で初めて会った。彼は、面識のない私たちを迎え入れるために、「G2P-Japan」と書いた紙を持って、空港で私たちを待っていてくれた。 ※後編はこちら 文・写真/佐藤佳