「常人には理解不能」麻雀漫画『哲也』の玄人たちが魅せた「運頼みすぎる奇策」
■イカサマが超一流なら運の太さも規格外! 哲也の「裏ドラ狙いリーチ」
ここまでライバルの戦法を見てきたが、我らが主人公の哲也も運に身を委ねた闘牌で読者をよく驚かせている。 印象的だったのが、元海軍中尉の白水俊弥との戦いに終止符を打った裏ドラ狙いのリーチだ。 白水優位のまま迎えた最終局で、哲也は役満でアガらなければ逆転できないほど点差をつけられていた。しかも手牌は役のないクズ手……絶体絶命の状況だが、哲也は迷わずリーチに打って出る。 一見無謀な選択の真意は、哲也のアガリによって判明した。それはリーチをかけてアガった者の特権、裏ドラだ。アガった哲也が裏ドラを見てみると、手牌に4枚ある四筒に丸々ドラが乗る三筒が3枚。 「リーチ・ドラ十二 数え役満だ」クズ手を一瞬で最強手に変えた哲也の宣言とともに、戦いは幕を閉じるのだ。 まさに大逆転劇だが、このときの哲也はいっさいイカサマをしていない。勝負の流れや状況から裏ドラが乗る可能性が高いと予想していたものの、本人も「(裏ドラがあるとは)わからなかったよ」と言い切っている。 イカサマでも超一流なのに、自分の運に賭けた一か八かでも結果を出す。これこそ最強の玄人・哲也の真骨頂というべき作戦である。 “運”とは目に見えないものだ。私たちもよく「今は流れが来ている」などと言うが、実際は冗談だったりそう思い込みたくて言ったりするだけだ。目に見えず、操れもしない運の存在を心から信じるのはとても難しい。 だが『哲也』に登場する玄人たちは運を強く信じ、命を賭けた闘牌に作戦として盛り込んでしまう。その固い信念こそが強運を呼び込むのだ。その戦いぶりが、常人には到底理解できない「奇策」に見えるのだろう。
ハチミツ