「TRICK」や「SPEC」の再来? ドラマ「ゼンケツ」が面白すぎる件ーー「全領域異常解決室」にはヒットの要素しかない理由
第7話では新たな人物(野間口徹)が登場し、不老不死の人魚のミイラを使って、現状の神々を排除し、新しい神を作り上げようとする計画を語った。 もしかしたら、進化したテクノロジーを持った人間が神殺しを目論んでいるのではないか。事態は大それた「神殺し」の物語へと転がっていきそうなのだ。スケールがでかい。 ■社会問題も含んだエンターテインメント 主演の藤原竜也は2000年代に大ヒットした漫画原作の実写映画『デスノート』で、人間ながら「新世界の神になる」と宣言する夜神月を演じていた。
『ゼンケツ』での藤原竜也は、逆に人間にとって代わられそうになっている神様を演じているのである。 『デスノート』然り、人間が進化を遂げて不可侵な領域にまで迫っていくことの是非を問う物語は古くから存在する。 例えば、AIが人間を凌駕してしまいそうな2045年にはシンギュラリティ(AIが人間の知性を上回るという仮説)が起こると言われる今、この手のテーマは以前にも増して誰もの身近な問題になってきている。
『ゼンケツ』は一見、マニア受けのオカルトミステリーだが、よくよく味わってみれば、大ヒットドラマに成り得る、社会問題も含んだエンターテインメントなのである。 怪奇現象や怪奇事件というものが、実は人間の仕業であるという物語も珍しくはなく、代表格に『トリック』シリーズ(テレビ朝日系、2000~2014年)がある。 種も仕掛けもあるマジックを生業とする主人公と物理学の教授がコンビを組んで、不思議現象を理路整然と解き明かしていく。『ゼンケツ』もその路線と思わせて、特殊能力を持つ神様が転生し続けているという科学では解明できない、宇宙的に大きなスケールになりそうな気配を漂わせる。
さらに、この手のヒットドラマの先行作には『SPEC』シリーズ(TBS系、2010~2013年)もある。よくある刑事ものと思わせて、じょじょに超能力バトルものになっていくが、そこにも社会問題が忍ばされていた。 ■『光る君へ』とリンクする? 『トリック』『SPEC』『デスノート』『聖☆おにいさん』『ブラッシュアップライフ』等々……視聴者を熱狂させるヒットエンタメの要素を見事に盛り込みながら、新たなドラマを作りあげたのは、脚本の黒岩勉である。