<春を駆ける・2020センバツ>選手紹介 航空石川 田中颯希投手(2年)/ 中谷仁人捕手(2年) /石川
◇二人三脚で鍛えた投手力 チーム戦術支える 「守備からリズムを作って、粘り強く1点ずつ取る野球」。日本航空石川ナインが口をそろえるチーム戦術を支えるのが、田中颯希(さつき)投手(2年)と中谷仁人(ひろと)捕手(同)のバッテリーだ。秋季大会では、主戦と目された嘉手苅(かてかる)浩太投手(2年)がけがに苦しむ中、背番号10を背負った田中投手が全9試合に登板し、3完投。46奪三振を奪った。「この1年間ですごく成長した」と中村隆監督(35)が評価する裏には、相方である中谷捕手の助けがあった。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 1年生の春から試合に出ていた嘉手苅投手に「うらやましい。負けていられない」と感じ、打者の嫌がる投球フォームを模索し続けた。だが「迷い過ぎて分からなくなった」状態に。そんな悩める田中投手に中谷捕手がアドバイスしたのは1年生の冬。「セットポジションでやってみたら?」。自身が打者として苦手にしていた小、中学生のころの経験からだった。走者がいなくてもクイックモーションで投げたり、逆に間を取ったりすることで、打者のテンポを乱すのが目的だ。 アドバイスを試そうとブルペンに誘う田中投手に、中谷捕手は「田中のためなら」と応じ、2人は1年生の12月から春先まで、多いときは1時間ほどブルペンに通い続けた。田中投手は「あのアドバイスは大きかった。秋に結果が出たのは中谷のおかげ」。 中谷捕手はとにかく「研究熱心」(中村監督)。秋季北信越大会前には対戦相手の試合の映像を収めたDVDを見て、相手打者をどう押さえるか、練習後の寮の自室で夜遅くまで研究した。 準々決勝の敦賀気比(福井1位)戦、2―1で迎えた四回、相手の攻撃。2死二塁として9番打者を迎えた場面で、中村監督からバッテリーに直球のサインが出た。しかし、中谷捕手は初めて指揮官の指示に首を横に振った。この打者を塁に出せば上位打線に回る。「打者は真っすぐを待っている。田中は安定してスライダーでストライクが入る」(中谷捕手)と、スライダーを要求。遊ゴロに押さえた。 中村監督が「勝負どころで意志を曲げずにきたのはよかった」と話す決断に、中谷捕手は「自分を信じてよかった」と笑みを浮かべる一方、「逆に直球だったらどうやったろう。あの場面に戻れるならやってみたい」と挑戦意識ものぞかせる。 「先発完投したい」(田中投手)「盗塁されない送球をして、投手をもり立てる」(中谷捕手)。二人三脚で鍛えた投手力が全国の強豪にどこまで通用するか、楽しみだ。