英国ルームメートと見た「SHOGUN 将軍」 英語にした途端にビュンっと戦国時代が身近に感じられる
私の中の愛国心が歓喜したステレオタイプからの脱却
この作品がエミー賞を受賞した際に、世の中で話題を呼んだトピックは「ステレオタイプからの脱却」。多様性がこんなにうたわれる現代もなお、ハリウッドをはじめとする欧米ではアジア人、そして日本人とは〝こういうもの〟というステレオタイプの像がある。ハリウッドで日本を描くなら、着物、ヤクザ、アニメなどをとりあえず登場させ、肝心の日本人役は日本人じゃなくてアジア系の役者、だという作品を今までいくら見てきたことか。映画の世界だけではなく、私がイギリスで「日本から来た」と言うと「ニーハオ」や「アニョハセヨ」と何度言われたことか。 海外から見て日本という国の輪郭がぼやけていた中で、「SHOGUN 将軍」が真の日本の姿をうそ偽りなく見せてくれたことに対し、私の中の愛国心が「よくぞやってくれた!」と言わんばかりに歓喜した。日本人のキャストを起用してくれたこと、日本の文化をねじ曲げずに演出したこと、そして、日本人の生き様はこういうものだ!と伝えてくれたことがとてもうれしかった。私の友達は、〝宿命〟に生きる物語の中の日本人を「美しい」と言った。美しい着物に身を包んだ外見、洗練された美しい所作、そして何よりもその生き様が美しいと感じたらしい。まるで、物語に出てくるイギリス航海士のように、友達は目の前に現れた威厳満ちた武将に感服していた。
忘れないでいたい、自分にも備わっている〝美しさ〟
最近は「I’m from Japan.(私は日本出身です)」と言うと、「SHOGUNを見たよ!」と言われることがたまにある。その度に、日本語のドラマを見たよ!とイギリスで言われる日が来るなんて誰が想像したかと思う。私もただの一視聴者にすぎないが、作品に対して「かっこよかった」「面白かった」「日本に興味を持った」と感想を聞くと、なんだか自分まで褒められた気がして誇らしかった。 私もこの作品を通して、日本で生まれ育ったからこそ自分に備わっている〝美しさ〟というのをイギリスでも忘れないでいたいと再確認できた。と、いろいろ日本人の美点みたいなものについて沢山語ったけれど、とりあえずドラマとしてめちゃくちゃ面白いから!日本人も、そうでない人も、難しいこと考えずにぜひご覧いただきたい。
青山波月