岩村監督の退任(8月29日)
引き際にその人の器量が表れるとも言われる。スポーツ選手しかり、経営者しかり。自分で決断するか、周囲に促されるか▼海外開催の五輪で最多のメダル獲得に沸いたパリ大会後、複数の選手や監督が一線を退いた。表彰台が期待されたバレーボール女子の主将は「後悔なくやり切ることができた」とすがすがしい。サッカー女子監督は「選手とともに、ここから先の景色を見たかった」。8強入りしながらも、協会からの契約延長の打診がなく、無念の幕引きだったか▼プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの福島レッドホープスの岩村明憲監督が今季限りで退任する。球団経営者でもある。ここ数年の成績が振るわず、「退任よりも解任に近い」と、自らチーム創設10年の節目に重い決断をした。10年前に選手兼監督に就き、現役引退後は監督兼社長として球団存続に尽くしてきた。球団経営には今後も携わる予定だが、現場から惜しむ声が上がる▼岩村監督の信条は「何苦楚[なにくそ]魂」。震災の痛手を受けた県民を勇気づけたいと、「福島のために」を掲げて駆け抜けてきた。今季は残り2試合。采配を振るう赤いユニホーム姿を記憶にとどめ、感謝の声援を届けたい。<2024・8・29>