<ライブレポート>NIKO NIKO TAN TAN サウンドや映像、展開の全てが中毒性高いツーマン【喜劇】最終公演
音楽と映像をメンバー内で制作するクリエイティブ・ミクスチャー・ユニット、NIKO NIKO TAN TAN(以下、ニコタン)が6月23日、東京・Zepp Shinjukuにてツーマンライブ【NIKO NIKO TAN TAN 2MAN TOUR 2024 "喜劇"】を開催した。 その他の画像 3人組オルタナティブロックバンド、ego apartmentを招いた大阪・梅田Shangri-La(5月3日)に続く本公演は、5月1日にニュー・アルバム『((ika))』をリリースしたばかりの盟友Tempalayがゲスト。なお転換DJには、ニコタンの8月リリースのメジャー1stアルバム『新喜劇』のジャケットを含め、ニコタンの新しいアートワークのクリエイティブをメンバーのDrug Store Cowboyと共に手がけるイラストレーターのYUGO.も駆けつけ、この日のイベントを大いに盛り上げた。 定刻になり会場が暗転すると、まずはステージ後方に貼られたスクリーンに映像が映し出される。原始人のコスチュームに身を纏ったメンバーのOCHAN(Vo. / Syn)とAnabebe(Dr)が、動物の骨を太鼓のバチに見立て大きな岩を打ち鳴らすという、映画『2001年宇宙の旅』のオマージュが盛り込まれており、会場のあちこちから大きな笑い声や歓声、拍手が湧き起こる。映像の中で、原始人が骨を空高く投げると同時にヘヴィでプログレッシヴなサウンドスケープが洪水のように押し寄せ、まずはドラマ『向かいのアイツ~メトロンズ初主演 連続ドラマ~』のオープニング・テーマに起用された「IAI」から今日のライブはスタートした。緩急をつけながら縦横無尽に展開していくドラムの上で、ケレン味たっぷりの三味線フレーズが目まぐるしく動き回る。 「徹底的に踊れますかー!?」とOCHANが叫び、間髪入れずに「カレイドスコウプ」へ。ステージの端から端まで練り歩きながら、まるで呪文のようなラップを繰り出すとフロアからは歓声が上がる。クラシックからの影響をも感じさせる、とびきりキャッチーなメロディになるとオーディエンスが一斉に手を振り上げ、早くも会場は一体感に包まれた。 巨大スクリーンにはDrug Store Cowboy(映像・モーショングラフィック・アートディレクター)による、宇宙と森と幾何学模様をランダムにミックスしたタイトル通りカレイドスコープ(万華鏡)のような映像を投影し、この曲の持つサイケデリアを見事に視覚化してみせる。かと思えば「パラサイト」では、リズムが倍になったり半分になったりと目まぐるしく変化し、EDMからの影響も感じさせる楽曲構成で盛り上げていった。 力強い4つ打ちキックの上で、ファルセットを駆使したソウルフルかつ官能的なメロディが炸裂する「多分、あれはFly」。頭上に設置された大きなミラーボールがゆっくりと回り出し、光の粒子が飛び交う会場は深夜のクラブへと様変わり。ファンキーな横揺れのリズムに身を任せていると、自然と腰が動き出す。 「今日が【喜劇】のツアーファイナル。最後までめちゃくちゃ楽しんでいって!」そうOCHANが叫び披露した「琥珀」は、入り組んだコード進行や唐突な転調にハッとされつつ、どこかオリエンタルな響きを纏ったメロディが美しくも郷愁を誘う。一度耳にしたらすぐにでも口ずさみたくなるような中毒性も併せ持ち、気づけば彼らと一緒になって歌っていた。 あたりが水の音に包まれたかと思いきや、海面を漂うクラゲを彷彿とさせる幻想的な映像が流れ出す。「水槽」はリズミカルなオルガンのバッキングと、グロッケンシュピールの音色がファンタジック。自分自身の内面へ、深く深くダイブしていくような感覚を味わっていると一転、「俺たちのお祭りソングを演奏します!」とOCHAN。「祭囃子鳴っているわ」はその名の通り、お囃子を取り入れたトライバルなリズムが高揚感を煽る。一体いくつ腕があるの? というくらい手数の多いAnabebeのドラムも圧巻だった。 ハチロクのリズムの上で、切なくも力強いメロディを歌い上げる新曲「No Time To Lose」、ホラーゲームをモチーフにした映像が楽しい「MOOD」、ミニマルでオリエンタルなシンセフレーズが、どこか坂本龍一の80年代のソロ作をも彷彿とさせる「恍惚と不安」と、どれも一筋縄ではいかないニコタンならではの楽曲を、次々に繰り出していく。 「まだまだいけますかー!」というOCHANの呼びかけと共にスタートした「Paradise」では、メンバーがステージの上からハンドクラップを誘い、オーディエンスもそれに全力で応える。そこからなだれ込むように「WONDER」へ。ジャスティスやプロディジーなど、2000年代のエレクトロクラッシュを現代にアップデートしたような楽曲で、パワフルなキメに合わせて拳を振り上げるオーディエンスの姿に思わず胸が熱くなった。 「同級生」では艶かしくもセンチメンタルなファルセットボイスでオーディエンスを魅了しつつ、ステージの上をぴょんぴょんと跳ね回るOCHAN。再び回り出す煌びやかなミラーボールが、エンディングに向かって走り抜ける2人の姿をキラキラと縁取っていた。そして、クイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」もかくやと言わんばかりのアンセム「Jurassic」で本編は終了。アンコールでは「胸騒ぎ」を演奏した後、OCHANいわくTempalayに捧げた「ハナノヨウ」を歌い上げ全てのライブは終了した。 あらゆる音楽スタイルを貪り食うように取り込みながら、カテゴライズ不能なサウンドスケープを奏でるOCHANとAnabebe、それを様々な角度から多角的に映像化してみせたDrug Store Cowboy。そんな気鋭の3人組ニコタンの作品が、今後も更なる進化を遂げていくことは間違いないだろう。 Text by 黒田隆憲 Photos by ヨシモリユウナ ◎セットリスト 【NIKO NIKO TAN TAN 2MAN TOUR 2024 "喜劇"】 ※2024年6月23日公演 1. IAI 2. カレイドスコウプ 3. パラサイト 4. 多分、あれはFly 5. 琥珀 6. 水槽 7. 祭囃子鳴っているわ 8. No Time To Lose 9. MOOD 10. 恍惚と不安 11. Paradise 12. WONDER 13. 同級生 14. Jurassic 1. 胸騒ぎ 2. ハナノヨウ ◎リリース情報 アルバム『新喜劇』 2024/8/7 RELEASE <VICTOR ONLINE STORE限定盤(CD+オリジナルキーホルダー+ブックレット)> NZS-970 6,050円(Tax in) <通常盤(CD)> VICL-65979 3,300円(Tax in) ◎ツアー情報 【NIKO NIKO TAN TAN ONE-MAN TOUR 2024「新喜劇」】 10月18日(金)大阪・Music Club JANUS 10月26日(土)愛知・新栄シャングリラ 10月27日(日)福岡・BEAT STATION 11月4日(月・祝)北海道・Sound lab mole 11月23日(土・祝)宮城・仙台MACANA 11月29日(金)東京・LIQUIDROOM