イチロー「戦力外」の真偽
マリナーズは昨オフ、そのことを慎重に検討し、そのうえで契約に踏み切ったのである。ギャメルの故障が引き金に なったことは確かだが、イチローを呼び戻したのはそれだけが理由ではない。つまり、決着済みの話。もちろん、今回のような雑音が聞こえてくることも 想定内。全てを含んでマリナーズは腹を括った。 逆にイチローに限らず、フランチャイズプレイヤーをロースターの問題でカットする方が、よほど覚悟を求められる。ファンの反応もそうだが、選手らにこのチームは功労者を容赦なく切り捨てる、というイメージを持たれる方が、後々のダメージが大きい。 勝負のためなら、アメリカのプロスポーツは非情に徹する、との見方もあるが、それは選手による。また、そうなる理由が必ずある。 もちろん、その理由として力が衰えたということが明白ならば、仕方がない。ただ、29打席でマリナーズにそれを判断できる眼力があるのだとしたら、これほど長く低迷していない。 振り返れば、昨年の4月にも同じような声を耳にした。4月は27打数4安打で、打率.143 。5月は41 打数8 安打で打率.195 。ただ、打席数が100打席を越えたあたりから、静かになった。 そもそも今年は、キャンプでの調整時間がないに等しい。契約したのが3月7日。その後、右足ふくらはぎの張り、頭部への死球などで、大幅に調整が遅れた。 イチローの力を判断するとしたら、まだまだ先の話である。 もっとも、スタメン出場が少なくなることだけは避けられそうにない。それは既定路線。しかし、開幕前からこれだけけが人が出ているチーム。1ヶ月後のことは誰にも分からない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)