どうしてイスラエル・ハマス戦争では経済制裁の話が上がらないの?
■アメリカのリアルな温度感 「1948年、ユダヤ人国家として独立宣言をしたイスラエルの建国に大きな役割を果たしたのはイギリスですが、戦後、イギリスに代わり、イスラエル最大の軍事支援国として後ろ盾となってきたのは、ほかならぬアメリカです。 実は、そんなアメリカはイスラエルを超える『世界最大のユダヤ人人口』を抱える国でもあります。アメリカの人口、約3億3100万人に占めるユダヤ系の割合はわずかに2.2%程度ですが、それでも約650万人と、イスラエルに暮らすユダヤ人より多く (※統計によっては、イスラエルに次ぐ世界2位とするものもある)イスラエルとアメリカの2国だけで、世界のユダヤ系人口の実に85%以上を占めています。 そんなアメリカでは程度の差こそあれ、保守派の共和党だけでなく民主党もイスラエル支持が基本姿勢です。それは、現在のバイデン政権に関しても同様ですし、テレビニュースなどの報道機関も基本的にはイスラエル目線で、一応『ガザの人道状況も心配ですね......』とつけ足すような状態です。 それに、イスラエルには、アメリカとイスラエルの二重国籍を持つ人も多い。そのため、今回もメディアは盛んに『ハマスに殺害されたり、人質に取られたりしたアメリカ人の悲劇』というような話題を連日のように報じています。 イスラエル側が今回の軍事作戦を、アメリカがイラクやアフガニスタンでの戦争で用いた〝テロとの戦い〟という文脈でとらえている以上、イスラエルに対しては経済制裁どころか、非難すらできないというのが、おそらくアメリカの本音でしょう。 では、事実上、イスラエルと一心同体のようなアメリカに盾突いてまで、欧州や日本がイスラエルに対して経済制裁を行なえるかといえば、これも、現実問題としてはなかなか難しいんです」 こうしたアメリカの「親イスラエル」の姿勢には、国内のユダヤ系の存在だけでなく、共和党支持者などの保守派を中心に大きな政治的影響力を持つ「キリスト教福音派」の存在も大きいという。 「キリスト教福音派には『聖書に書かれていることはすべて真実だ』と信じている人が多く、進化論なども受け入れないのですが、聖書には『世界の終わりが来るとき、パレスチナの地にはユダヤの王国がある』と書かれているんです。だから、彼らもイスラエルを強く支持している。 ちなみに、民主党のバイデン政権も基本的にイスラエル支持とはいえ、一応、人道的な停戦への働きかけをしていますし、パレスチナ和平に関する国連決議やオスロ合意に基づいた『イスラエルとパレスチナの2国家共存』は堅持するという立場ですが、仮に、今年11月の大統領選で共和党のトランプが勝利すれば、おそらく、2国家共存の合意など無視して、ネタニヤフ首相とイスラエルのやりたい放題を許してしまう可能性が高いのではないかと思います」