どうしてイスラエル・ハマス戦争では経済制裁の話が上がらないの?
2023年10月7日にイスラム組織ハマスが奇襲し、それにイスラエル軍が反撃する形で始まったイスラエル・ハマス戦争。連日、死者数が増え続けているのに、停戦交渉は滞っている。もっと積極的に停戦に向かうべきじゃない? それこそロシアのウクライナ侵攻みたいに、軍事介入じゃなくても経済制裁とかなら皆で力を合わせてできるんじゃないの!? 【写真】イスラエルを批判するブラジルのルラ大統領ほか * * * ■ハマス側には科した経済制裁 イスラム教のラマダン(断食月)を迎えても戦闘が続く、イスラエル・ハマス戦争。 昨年10月7日に起きたハマス側の奇襲攻撃に対する反撃として、イスラエル軍による大規模なガザ侵攻作戦が始まってから5ヵ月余り。 すでにパレスチナ側の死者は、確認されているだけでも3万1000人を超え(3月10日時点/パレスチナ保健省発表)、現地では深刻な食糧不足で餓死者も出始めている。そんな最悪の人道上の危機の中、一刻も早い停戦を求める声が世界中で高まっている。 しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は一貫して「ハマスを完全に殲滅するまで軍事作戦を継続する」という姿勢を崩しておらず、国連の安全保障理事会でも即時停戦を求める決議案に対して、イスラエル最大の支援国である常任理事国のアメリカが3度にわたって拒否権を発動。誰もイスラエルを止められない状況が続いている。 もちろん、この紛争の直接のきっかけがハマスによる奇襲攻撃であったのは事実だろう。また、その際、ハマス側が数百人におよぶイスラエルの民間人を殺害したり、人質として拉致したりしたのも明らかな国際法違反で、アメリカを中心に欧州諸国や日本はこうしたハマスの奇襲攻撃を強く非難し、ハマスの資金源につながる組織や人物を対象にした経済制裁を数回にわたって行なってきた。 だが、鹿児島県の種子島ほどの面積に200万人以上が暮らす世界有数の人口密集地域で、イスラエル側が建設した壁によって封鎖された、別名「天井のない監獄」とも呼ばれるガザに対し、連日、大規模な空爆と地上軍による攻撃を繰り返して3万人近い民間人の命を奪い、人道支援すらままならない状態でも攻撃の手を緩めないイスラエル側に対しても「国際法違反」「戦争犯罪」だという非難の声が上がっている。 ではなぜ、誰もイスラエルを止められないのか? 国連の安保理が機能しないなら、ウクライナ侵攻でロシアに対して行なったように「経済制裁」という形でイスラエルに対して停戦に応じるよう、圧力をかけることはできないのだろうか? 「少なくとも、アメリカがイスラエルに対して制裁を加えることはありえません。なぜなら、イスラエルの問題はアメリカにとって〝国内問題〟だからです」と語るのは、アメリカ現代政治に詳しい国際政治学者で上智大学教授の前嶋和弘氏だ。